紅い華

第32章:静かな怒り


作:千菊丸さん
 業平は走り去ってゆく千寿丸を見送ると、邸内に入った。
 父と母はすでに寝室で床に就いていた。
 リビングのカウチで横たえながら、業平は父が母と自分に対してしてきた仕打ちを思い出していた。
 父は母と結婚する前に、東洋財閥の社長令嬢との間に1子をもうけていた。そして母と結婚した後も関係は続いていた。
 母は毎日父を罵り、解消のしようがないストレスを幼い業平にぶつけていた。家の中はいつもピリピリとしており、家族団らんなどは一度もなかった。父はいつも家を空けていた。
「お前のせいよ!お前がいい子にしないからお父さんはあの女のところに・・」
 物心つかないうちから母はそう言って業平を叩いた。
 はじめは小突く程度の暴力が、次第にエスカレートしていき、虐待となった。
 母は行き場のない怒りを業平にぶつけた。起きるのが遅い、忘れ物をしたという些細な理由でも、殴る蹴る、布団叩きでぶつなどの暴行を加えた。
「お前なんか産まなければよかった。」
 暴行に加えて、母は言葉の暴力で幼い業平の心を鋭く抉った。
 一生いやされぬ傷を抱えながらこれまで生きてきた。
 業平は心の底から父と、あの女を憎んだ。
 そして今日ー目の前に、あの女の息子が現れた。
 業平の過去の傷が、激しい怒りとなって千寿丸に現れた。
(認めるものか・・あいつは在原家の一員じゃない!)
 だが自分が千寿丸に対して恋心を抱いていることを、業平は自覚していた。
 真っ赤に泣き腫らした千寿丸を見て、諸兄は在原邸で何かあったのだと悟った。阿じゃ梨様から、業平と千寿丸は腹違いの兄弟であることは知っていた。
「業平様が・・僕を・・僕を疫病神だって・・」
「なんと!」
 千寿丸は諸兄の胸の中で泣きじゃくった。
 業平に対する静かな怒りが、諸兄の胸の中で広がった。








業平さんの悲惨な過去が明らかに。父が美岬さんと関係を続けていたことで、業平さんは幼い頃、母から虐待を受けていた。
次第に業平さんは父と美岬さんを心底憎むように・・。
千寿丸に対する業平さんの感情は激しい憎悪と恋心が入り交じった複雑なもののようです。
そして業平に対して怒り心頭の諸兄さん。
次回、2人の友情にヒビが・・


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