紅い華

第16章:危険な計画


作:千菊丸さん
 音楽祭当日。
 聖光学院の音楽祭は、創立以来、数々のピアニストを輩出してきた権威のあるものである。
 賓客は、政財界の大物や、各国の大統領などがいる。
 千寿丸は、賓客のレベルに、緊張していた。
 失敗などしたらどうしよう。
 緊張する千寿丸の肩を、高校部2年の百合丸が優しく叩いた。
「大丈夫だよ、練習の成果を素のままで表現すればいいんだよ。」
 千寿丸の緊張が、少しほぐれた。
 舞台の深紅の幕が、ゆっくりと上がった。
 千寿丸はショパンのエチュード『木枯らし』と、『夜想曲第20番嬰ハ短調(遺作)』を演奏した。
 難曲を千寿丸は必死に演奏した。額から汗を掻き、掌の汗で鍵盤を濡らしながら。
 観客は千寿丸の演奏に魅了された。
 千寿丸は音楽祭で最優秀賞に輝いた。
 客席には、諸兄が千寿丸に微笑んでいた。
 トロフィーを抱えながら、千寿丸は走りながら、諸兄の携帯にかけた。
 昨日、諸兄は病室で千寿丸に計画の全容を話した。
『俺の荷物は業平がまとめてくれた。千寿、今すぐ家に帰って、荷物をまとめろ。2人で拓尊の手の届かないところへ行こう。音楽祭が終わったら、すぐに出発しよう。
 学院の裏口にある桜の木で、待っている。』
 桜の木につくと、諸兄がいた。
「さあ、行こう。業平はすぐに来る。」
 業平のステーションワゴンはすぐに来た。
「早く乗れ!」
 諸兄と千寿丸が乗り込むと、業平は猛スピードで車を発進させた。
「どこへ行くつもりだ?」
 業平は成田方面へ車を走らせながら言った。
「まずはじめに韓国へ行って、それから空路でモンゴルへと逃げる。そして陸路でトルコへ行く。」
「何故トルコなんだ?」
「3年前、トルコで世話になった人がいてな。Mr.ムハンドゥラだ。」
「あの人なら信用できる。ムハンドゥラ氏は悪には屈しない人物だ。」
 車はもうすぐ成田に着こうとしていた。

 その頃、拓尊は部下からの連絡を聞いた。
「国外逃亡とは・・儂から逃げられると思うておるのか、若僧が。」








諸兄と千寿丸、国外逃亡を企てる。
しかし拓尊の魔手がすでに伸びていた・・。
拓尊は、千寿丸を捕まえるだろうな。
そして、諸兄に会わせないようにするだろうな。

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