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音楽祭当日。 聖光学院の音楽祭は、創立以来、数々のピアニストを輩出してきた権威のあるものである。 賓客は、政財界の大物や、各国の大統領などがいる。 千寿丸は、賓客のレベルに、緊張していた。 失敗などしたらどうしよう。 緊張する千寿丸の肩を、高校部2年の百合丸が優しく叩いた。 「大丈夫だよ、練習の成果を素のままで表現すればいいんだよ。」 千寿丸の緊張が、少しほぐれた。 舞台の深紅の幕が、ゆっくりと上がった。 千寿丸はショパンのエチュード『木枯らし』と、『夜想曲第20番嬰ハ短調(遺作)』を演奏した。 難曲を千寿丸は必死に演奏した。額から汗を掻き、掌の汗で鍵盤を濡らしながら。 観客は千寿丸の演奏に魅了された。 千寿丸は音楽祭で最優秀賞に輝いた。 客席には、諸兄が千寿丸に微笑んでいた。 トロフィーを抱えながら、千寿丸は走りながら、諸兄の携帯にかけた。 昨日、諸兄は病室で千寿丸に計画の全容を話した。 『俺の荷物は業平がまとめてくれた。千寿、今すぐ家に帰って、荷物をまとめろ。2人で拓尊の手の届かないところへ行こう。音楽祭が終わったら、すぐに出発しよう。 学院の裏口にある桜の木で、待っている。』 桜の木につくと、諸兄がいた。 「さあ、行こう。業平はすぐに来る。」 業平のステーションワゴンはすぐに来た。 「早く乗れ!」 諸兄と千寿丸が乗り込むと、業平は猛スピードで車を発進させた。 「どこへ行くつもりだ?」 業平は成田方面へ車を走らせながら言った。 「まずはじめに韓国へ行って、それから空路でモンゴルへと逃げる。そして陸路でトルコへ行く。」 「何故トルコなんだ?」 「3年前、トルコで世話になった人がいてな。Mr.ムハンドゥラだ。」 「あの人なら信用できる。ムハンドゥラ氏は悪には屈しない人物だ。」 車はもうすぐ成田に着こうとしていた。 その頃、拓尊は部下からの連絡を聞いた。 「国外逃亡とは・・儂から逃げられると思うておるのか、若僧が。」 諸兄と千寿丸、国外逃亡を企てる。 しかし拓尊の魔手がすでに伸びていた・・。 拓尊は、千寿丸を捕まえるだろうな。 そして、諸兄に会わせないようにするだろうな。 |