紅い華

第15章:辛い選択


作:千菊丸さん
 諸兄は病室のベッドで頭を抱え蹲っていた。
 さきほどの拓尊の言葉が胸を焼き焦がす。
『借金を帳消しにしたかったら千寿丸を儂の遊郭に売れ。』
 拓尊は都心から少し離れた島で遊郭を経営しており、借金返済に追われた女性や少女、少年などが働いていた。
『うちの遊郭は食事も3食きちんとあるし、勉学に支障がでない範囲内で働かせている。』
 拓尊の嘘は明らかだった。
 悪徳金融業者として悪名高い拓尊は、遊女や陰間を際限なくこき使い、中には精神に異常をきたす者がいて、自殺者が多い遊郭でその島界隈では有名なのだ。
 そんなところで千寿丸を働かせるわけにはいかない。しかし借金のことを考えると、そんなことを言ってられない。
 千寿丸を取るか、借金を取るか。
 諸兄は辛い選択に神経を高ぶらせていた。

 そのころ、千寿丸と妙宝丸の溝は、埋められないほど深くなっていった。
 もうすぐ音楽祭が迫っているので、千寿丸は日夜練習に励んでいた。
 練習の疲れで、授業中に居眠りをしてしまう。
 そのことを、妙宝丸は、
「学年1位の千寿丸君は、余裕があっていいね。」など、ネチネチと嫌味を言うのだった。
 千寿丸は妙宝丸の嫌味を完全に無視した。

 昼休み、千寿丸は気の許せる仲間と、ランチを食べていた。
 その時、業平からメールが届いた。
『諸兄が倒れた。』
 午後の授業の公欠届けを出し、千寿丸は業平の車で諸兄が入院している病院へと向かった。
 千寿丸は諸兄の病室につくなり、諸兄にとびついた。
「心配をかけてすまなかったな。」
 諸兄は千寿丸に昨日拓尊が来たこと、そして借金のことを話した。
「奴はお前を自分の遊郭で働かせようとしている。俺はお前にそんなことをさせたくない。心配するな、俺はお前を守る。」
 諸兄の言葉を聞くと、千寿丸は安心して帰っていった。

「どうするんだ、お前。まさか千寿を遊郭に売るのか?」
 千寿丸が帰った後、業平は諸兄に問いつめた。
「千寿丸は売らぬ。遊郭などには行かせぬ。」
 諸兄の言葉を聞くと、業平は鋭く彼を見据えながら言った。
「お前が千寿を手放さなくならなくてもか?よく考えて見ろ、拓尊は自分が欲しい物はどんな手を使ってでも手に入れる。たとえ殺人を犯してもな。」
「殺人?!」
 諸兄の目が大きく見開いた。
「ああ、拓尊は昔、一目惚れした女を手に入れようと、その女の夫をなぶり殺しにした。あいつはお前の思っているほど、善人じゃない。性根の腐りきった、狡猾な悪党なんだ。」
 業平はそう言うと、病室のドアを開けた。
「千寿を地獄に放り込むか込まないかはお前次第だ。よく考えろ。」
 諸兄はそれから一晩中、寝ずにどのように千寿を拓尊の手に渡さないかを考えていた。

 翌朝。
 千寿丸が諸兄を見舞いに来た。
 千寿丸は諸兄に音楽祭のチケットを渡した。
「明日退院なされるそうですね。ご予定に差し支えなければご出席いただけれたらよろしいかなと・・」
「千寿、話がある。」








業平、諸兄さんを説得する。
拓尊の魔手から守ろうと、諸兄はある計画を千寿丸に話す。
これからドロドロの展開を書いていきたいと思います。

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