紅い華

第14章:派閥


作:千菊丸さん
 千寿丸が聖光学院に編入してから1週間が過ぎた。千寿丸はキリスト教にはじめ抵抗があった。
 「如意輪園」は浄土宗の寺の中にあったため、千寿丸は御仏の教えを幼い頃から阿じゃ梨様にたたき込まれて育ったからだ。
「御仏の教えを胸に、逆境にも負けないような子となってくれ。」
 2人目の里親に引き取られる前、施設を離れる千寿丸に阿じゃ梨様はそう言って優しく抱きしめてくれた。
 養父母にいじめられながらも、千寿丸は御仏の教えを思い出しては、耐えていた。
 御仏の教えが、身よりのない千寿丸にとっての唯一の救いだった。

 しかし、聖光学院はカトリックだ。
 それまでキリスト教を知らなかった千寿丸は、聖書を読むことに初め抵抗があった。
 だが、宗教の時間に、世界には仏教やキリスト教、イスラム教などの様々な宗教があるのだと知って、キリスト教に対して千寿丸は抵抗を感じなくなった。

 千寿丸は聖光学院に編入してからいままでと同じように勉強に励んだ。休み時間になると図書館で参考書やテキストを机に広げて授業の復習や予習に励んだ。その効果は毎週行われる試験に現れた。
 千寿丸は毎週学年トップの座に君臨していた。
 芸術科目(書道・音楽・美術)では、千寿丸は音楽を選択し、ピアノの試験は毎週高得点だった。
 幼い頃、阿じゃ梨様が高名なピアニストを呼び、千寿丸はそのピアニストからレッスンを受けたのだった。ピアニストのレッスンは楽しかった。千寿丸はピアニストのお陰ですっかりピアノの虜になってしまったほどだ。

 千寿丸は成績が良くても、それを鼻にかけたりはしなかった。
 温厚で明るく、初対面の人間とすぐに仲良くなれる千寿丸は、小学部の生徒たちから慕われていた。
 それは中学部の下級生たちでも同じだった。

 だが千寿丸を妬み、疎んじる者がいた。妙宝丸だ。
 廊下の一件以来妙宝丸は、千寿丸に何かとつっかかり、「捨て子のくせに」と罵った。
 それに加えて、教科書を隠す、机の中を荒らすなど、陰湿な嫌がらせをした。
 だが千寿丸は妙宝丸の嫌がらせには全く動じなかった。
 廊下で騒ぎを起こし、帰宅した後、諸兄にこう言われたのだ。
「嫌な奴は気にするな。お前は、お前の進みたい道にただ突き進んでいけばいい。」
 妙宝丸は嫌がらせに全く動じず、自分に媚びを売ろうともしない千寿丸に対して、いらだちを隠せなかった。
 妙宝丸は取り巻きに、千寿丸をクラスから孤立させるように指示した。

 翌朝、千寿丸はクラス中から無視された。
 突然シカトされた千寿丸は動揺したが、妙宝丸の仕業だと知り、動じないようにした。
 妙宝丸はイライラしていた。
 (捨て子のくせにお高くとまりやがって)
 妙宝丸は千寿丸のことをおおっぴらに中傷した。千寿丸は挑発には応じなかったが、妙宝丸と真っ向から対立することとなった。

 クラスメイトは妙宝丸の言葉を初めは信じていたが、千寿丸の人柄を知り、次第に千寿丸を支持する者が出てきた。それに対して妙宝丸の支持者も出てきた。
 1つのクラスに、2つの派閥がこうして、誕生した。








千寿丸と妙宝丸のバトル勃発。
まるで「大奥第1章」の第1部のおふとお江与みたいだな・・。
対立した者同士が和解する日はあるのだろうけど。
長崎・佐世保の小6女児同級生殺害事件において、加害者と被害者との間にトラブルがあった、と新聞では書いてありました。
小5,6年生となると、ちょうど思春期の入口にさしかかり、友人関係にも微妙な変化が訪れる時期ですね。
女子は複数のグループで行動するのだとか。
ネットや交換日記、携帯・・友達同士のつながりに固執して、些細なことが起こるとグループ内で仲間外れにしたり、無視したり・・現代の子ども達の友人関係は複雑ですね。
千寿丸と妙宝丸の対立によってこれからクラスに色々な事が起こるだろうな。
諸兄がらみで・・。

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