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千寿丸は朝の礼拝のために、クラスメイトと聖堂に入った。 聖光学院は、小中高一貫の、私立の男子校である。 明治10年に創立され、華族や宮様、議員の子息達が通い、現在は政財界のトップや国会議員の子息が通う名門校であり、国際社会で活躍する人物を数々輩出している。 青いブレザーに、カトリックの象徴の十字と、学院の象徴である薔薇が左胸の胸ポケットに縫い込まれている。 千寿丸は昨日の事を諸兄に話した。 『その子がお前のことを捨て子だと言ったのか?』 『はい。僕の事情は理事長しか知らないはずなのに・・一体どこから情報を・・』 『気にするな。』 礼拝が終わり、千寿丸は教室に入ろうとした。 そこへ、昨日の少年がやって来た。 少年は狐目で、栗色の髪をポニーテールにしている。 「お前だな、捨て子のくせにコネを使って入った奴って。」 「何が言いたい?」 少年は千寿丸のネクタイを掴んでいった。 「僕は妙宝丸(みょうほうまる)。ここは歴史と由緒のある名門校なんだ。本来はお前みたいな親なしっ子が入れないところなんだ。藤原一族のコネを使って入るなんて、なんて汚い奴なんだ。」 千寿丸は妙宝丸の手を払いのけた。 「バカバカしい。」 「なんだとっ!」 妙宝丸の眉がつり上がった。 「人を中傷するしか楽しみがない人間って、ホントバカバカしい。人を中傷してばかりいると、友達なくすよ?」 「ふんっ、捨て子のくせに、口は達者なんだな。藤原諸兄の少年狂いには参るね。」 今度は千寿丸の眉がつり上がる番だった。 「お祖父様が言ってたよ。藤原諸兄が捨て子を養子にしたのは、性的処理のためだって・・まあ、稚児にするなら捨て子が適役・・」 妙宝丸の言葉は続かなかった。千寿丸が彼の胸ぐらを掴んだのだ。 「諸兄様を悪く言うなっ!悪く言うと、お前を燃やすぞ!」 千寿丸の怒りに満ちた瞳に、妙宝丸は一瞬恐怖に震えたが、また口を開いた。 「捨て子のくせに、なんて生意気な口聞くんだ。思い知らせてやる。」 「やってみろ!」 千寿丸は妙宝丸と取っ組み合いの喧嘩になった。妙宝丸は千寿丸にパンチを喰らわせた。だが千寿丸は妙宝丸の顔にパンチを浴びせた。 互いに髪を引っ張り合い、顔を引っ掻きあいながら、千寿丸と妙宝丸は廊下を転がった。 「何してるんですか、2人ともやめなさい!」 シスターが殴り合っている2人の間に割って入った。 千寿丸、妙宝丸と取っ組み合いの喧嘩。 妙宝丸初登場です。 彼の家は金融業で、彼の祖父は拓尊です。 この小説では妙宝丸、悪役ですので、妙宝丸ファンの方、ごめんなさい。 妙宝丸、私あんまり好きじゃないんです。 なんていうか、生意気で、狡猾っぽいし。 次回は拓尊登場? |