「おはよ」
「………おはよう、ございます」
寝起きの良い紫苑とは対照的に。
目が半分も開ききっていない純は、表情のない顔で不機嫌そうに挨拶を返す。
そんな純の頭を、朝っぱらからなんだよ、と、紫苑がてのひらではたいた。
「……痛いよ」
布団に半分埋まったままボソボソとつぶやく純を見やる紫苑の眸はぱっちりと開いている。そして憤慨していた。
「なんか納得いかない」
「?」
「散々好き勝手したおまえが、なんでそんなにグダグダなんだよ!」
腰にだるさの残る紫苑が、なんか理不尽だ、と、唇を尖らせる。
「……基礎体力の違い?」
「は? それはずいぶんな言い草じゃないの?」
「絡むね、今日。もしかして生理?」
「違う!」
だよね、と返しながら、ようやく頭のはっきりしてきた純は、聞き捨てならないセリフに、紫苑の腕を掴んだ。
「ってゆーか紫苑さん、好き勝手して楽しんだの俺だけ?」
「――――!!」
思いがけない返しに固まった紫苑に、人の悪い笑みを浮かべた純は、躯を起してその手を引きよせると、鼻先が触れ合うほどの至近距離で問う。
「紫苑さんは?」
「…………」
耳まで赤くして視線を逸らした紫苑を腕の中に抱き込んで、甘やかな囁きを落とす。
「いまさら恥ずかしがることないと思うけど?」
耳元から響く声を振り払おうとするかのように、目をつぶって頭を振る紫苑の首筋に唇を押しつける。
「――――っ!!」
密着した純の躯の脈打つ熱を布越しに感じて、紫苑が必死で叫ぶ。
「こーゆー時ばっかり元気になるな!」
「煽ったの、誰だよ?」
「ちょっと……っ…ぁ、んっ――――」
結局。
形ばかりの抵抗しか示すことのできない紫苑は、純の発する熱に呑み込まれていった。
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