•  ささやかな企み
    〜純×紫苑〜 






     斜めに傾いだ太陽が差し込む窓際で。
     紫苑は、身体の軋みで目を覚ました。
     固い床の上に直接身を横たえたのだ。
     それは、あちこち痛くもなるだろう。

    「ん……」

     気だるさに身を任せて寝入ってしまったらしい。
     固まった身体をぐっと伸ばそうとしたその瞬間。
     傍らにあるあたたかなぬくもりに、気がついた。

    「うわっ!!??」

     思わず飛び起きる。
     心臓も飛び跳ねた。
     いつの間に訪ねて来たのだろう?
     そこには、紫苑に倣って床に転がり、穏やかな寝息をたてている純がいた。

    「何やってるんだ? コイツ……」

     指先で肉の薄い頬をつついてみる。
     が、一向に目を覚ます気配はない。
     前髪が降りかかる瞼は優しく閉ざされ、口元には穏やかな微笑が浮かんでいる。
     訪ねてきた部屋で寝こけている紫苑を眺めているうちに、自らも睡魔に誘われた。
     そんなところだろうか?

    「起こせよ、馬鹿……」

     乱暴な口調とは裏腹に、自分の口元が柔らかく緩んでいることに、紫苑は気づかない。

     さて。
     どうしようか。

     いっそ鼻をつまんで、唇を塞いでしまおうか?

     いや。
     腕を絡めて。
     躯を寄せて。
     甘やかな吐息を吹きかけてみるのも悪くない。

     純が目覚めたその瞬間に、声も出ないようなサプライズを仕掛けるために。
     紫苑は真剣に思考をめぐらせるのだった。







     End