カーテンを開け放したままの窓から、蒼い月の光が差し込んでいた。
月明かりに染められた室内は、異国の海の底にいるような神秘的な様相を呈している。
冴え冴えとした蒼白い月明かりを見るともなしに眺めていたルークだったけれども。
ふたたび眠りに落ちることは叶わず、諦めたようにゆっくりと躯を起こした。
躯の奥に生々しく残る疼くような感覚に、悩ましい吐息が零れる。
自分の痴態を引きずり出した男は、傍らで静かな眠りの中にいる。
「まったく……随分すっきりした顔してるよね」
口元に穏やかな微笑を浮かべている賢斗は、無害な野生の獣のようだと、ルークは思う。
そんな彼に無性に触れてみたくなって。
眠りを妨げないように、そっと腕を伸ばした。
右手の指先がその頬に触れれば、触れ合ったところから賢斗のあたたかな体温が伝わってくる。
流れ込んでくるぬくもりがひどく心地よくて。
拳全体でその頬を包み込むように指を滑らせた。
ざらつく髭の感触すらいとおしい。
起きる気配のない賢斗に、今ならばどんなことでもできるような気がする。
そんなふうに思いを巡らせたルークが、小さな微笑を浮かべたそのとき。
瞬く双眸が自分を見上げていることに気づき、いささかバツが悪そうに言葉を紡いだ。
「やだなぁ、賢斗。起きてるならそう言ってくれればいいのに」
答える代りに。
唐突に躯を起こした賢斗が、ルークの躯を抱き込んでベッドの上に縫いとめた。
「ちょっと! 賢斗!?」
かすれた声をあげるルークを見下ろす賢斗が笑っている。
「まだ足りなかったですか?」
「―――――!!」
その言葉に触発されたかのように、下腹が熱い熱を孕む。
隠し切れない欲望が、ルークの下肢でゆっくりとその存在を主張する。
「俺も、って言ったら、どうしてくれますか?」
「ちょッ……!」
押し付けられた賢斗の下肢もまた、同じような熱を孕んでいる。
「アナタが悪い。あんな触り方、するから」
「ケダモノ」
笑いながら、ルークが逞しい賢斗の首に腕を絡め、深い口吻けを交わす。
濃密さを増す夜の中、蒼い月の光の下でまぐわう二匹の獣。
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