•  午眠  
    〜月村×蒼井〜 





     あたたかな昼下がり。
     窓から差し込む柔らかな太陽の光。
     その光を全身に浴びながら、珍しく時間を持余し気味に、蒼井はゴロリと床に転がった。
     休日とは言え、やることが何もないわけではない。
     けれども。
     思考が完全に停滞している。
     何もやる気にならないのだ。
     見るともなしに向けた視線の先で動くものは銀色の細い秒針。
     静まり返った部屋に響くものは、アナログ時計が時を刻む音。

      カチカチカチ………

     なんでもないはずの静寂が………重い。
     たまらず、手に取ったスマホ。
     何度もコールしている相手の番号を呼び出そうとして、次の瞬間、手にしたスマホを滑らせるように床に放り出した。

    「何をやってるんだ、俺は……」

     もしも電話を鳴らしたのならば。
     そして、会いたいと告げたならば。
     月村はすぐさまこの場へと駆けつけてくるだろう。
     たとえ、何か用事があったとしても。
     わかっているからこそ、通話ボタンを押すことが出来なかった。
     子供じみた甘えのような気がして。
    『もっと甘えてくださいよ』
     不満そうに月村は言うだろうけれども。
    「一応な、これでも先輩だし?」
     小さく笑った蒼井は、すべての思考と動作を放棄する。

     すなわち。

     午後の穏やかな光に包まれるように、静かに眸を閉じた。





    End