•  理由なんていらない ただ好きなだけ
    〜翔真×竜〜 






     剥き出しの二の腕に唇を寄せる翔真に、竜が問う。
    「おまえさ」
    「ん?」
    「なんで俺なの?」
     途端に、歯を立てられた皮膚が軋み、竜は形の良い眉を顰めた。
    「っっ……何すんだよ!?」
     見上げる翔真の眸がやや剣呑に光る。
    「おまえ、この期に及んでそーゆーコト聞いちゃうんだ?」
    「別に……」
     不機嫌そうにふいっ、と視線を逸らした竜の髪に指を絡めながら、翔真が問い返す。
    「じゃさ、おまえは何で俺なの?」
     近づいてくる体温。
    「さぁ……」
     おざなりに答えて身を捩ってみたけれども。
     翔真は逃がしてはくれなかった。
    「さぁ、って……ソレ、ちょっと冷たくない?」
     腕の中におさめた竜の、男にしては華奢な首筋に唇を這わせて、翔真が甘えるように囁きかける。
     くすぐったそうに喉を鳴らしながら、竜は拒まない。
     キレイに筋肉のついた腕の中で器用に躯の向きを替えると、向き合う形になった翔真の眸を覗き込んで、彼の唇に薄い唇を重ねた。
     誘う口膣の中。
     舌を絡めあう。
     頭の芯が甘く痺れる感覚。
     心地よくて。
     より深く求めてしまう。
     息も、つけないほどに。
     熱い吐息の隙間から零れる悩ましい音が淫らに響く。
     名残惜しげに離した唇は、濡れて紅く色付いていた。
     熱を帯びた口元に、艶やかな笑みを浮かべながら。
     竜は翔真の首に腕を絡めて囁いた。
    「ってゆーかさ」
    「何?」
    「やっぱ、理由なんて、いらないんじゃねぇの?」
     自分から振っておきながら、竜は悪びれもなく嘯いて笑っている。
     どこか傲慢なその表情がたまらなくイイと思いながら、翔真も笑って頷いた。
    「かもな」
     もう一度、交わす口吻け。
     ふたり分の体重を受け、ベッドが軋む。
     素肌が触れ合うだけで五感が愉悦に跳ね上がった。
     欲しいのは、たったひとり。
     それは何故か。
     本能が知っている。
    「…………」
    「…っ」
     抱き合うのに、理由なんていらない。
     ただ、好きなだけ。
     その想いに、いまはただ―――――溺れてしまえばいい。





    End