23 - 秘める

 この、恋が終わったとしても、誰も気がつかない。
私の中で始まって、終わる。
だからといって苦しくないわけじゃない。

私は、あの人が、大好きなのだから。



「知ってた?」
「知るわけないよー」

軽い話題、とばかりに他人の恋愛話を持ち出した彼女たちに悪気はない。
そんなことはわかっている。
けど、私は頭に入らない話題に精一杯相槌をうつだけ。
顔はひきつっているに違いない。
少しだけ調子が悪い、と言っていた言葉で納得してくれているはずだ、たぶん。
彼女たちの話題は、昨年移動してきた部長の結婚話。
容姿は普通、だけれども身のこなしがそれなりにスマートで、出来る上司である彼はそこそこもてていた。
あからさまにちょっかいをかける人こそいないけど、遠まわしに彼にアピールしていた女子はいたようだ。
全く気がつかなかったけれど。
特定の相手がいる彼女たちは、それを面白そうに眺めては話題を提供してくれる。
それで私がどういう風に思うかだなんて、全く想像もしないで。

「まあ、学生時代からって言われたら、ねぇ」

どこから情報を仕入れてくるのか、あっという間に相手のプロフィールまで手に入れた彼女たちは、新鮮なネタを前にして生き生きしている。
純粋に他者を傷つける会話だけは絶対にしない彼女たちだから、あまりそういう話題に興味のない話題であっても私は混じっていられたのだけど。
今はただ、座っているだけでもきつい。
私の好きな人が、部長だったなんて、この人たちは知らない。
だから私の今の気持ちは八つ当たり以外なにものでもない。
そんなことは理解している。
でも。

「これでここも落ち着くといいんだけど」

話題的にはおもしろがってはいるけれど、それでも浮ついた雰囲気は好きではない二人は、そうやってうなずきあう。
確かに、浮き足立った女の子たちがあと少しで突進しそうではあった。
現在はあからさまに意気消沈した女の子たちが散見される。

「あ、そういえば、こんど飲み会あるんだけど」
「もちろん行くよね?」

二人係で畳み掛ける。
こんな風に強引に迫られたことがない私は呆然とするしかない。

「おっけー、参加ってことで」

何も答えていないのにいつのまにか参加することになっていて驚く。
が、どうにも口を挟めない勢いがある。

「あの」
「心配しないでって、身元不明なのとかはいないし」
「いや」
「大丈夫大丈夫。あれなら私たちがガードしたげるし」
「でも」
「決まりね」

あっという間にそういうことになって、彼女たちは去っていった。

「気分転換は必要だよー」

という言葉を残して。

私の恋心は、どうやら彼女たちには筒抜けだったようだ。
その気遣いが恥ずかしくて嬉しい。
まだ、笑顔にはなれないけれど。


再掲載07.08.2015/10.08.2014




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