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お題配布元→capriccio様
カミサマにとって、礼奈の存在は完全に想定外で予想外だ。
彼にとっての人とは、対等な存在ではない。有象無象に発生し、集団でそこにいて彼の存在を定義するものでしかない。
そこには個人と個人の感情のやりとりなどはありえず、また、人の方もそれを望んではいないだろう。
信仰心の衰退により、彼はその存在を薄くしていったとしても、あるがままに受け入れ、それに抗うようなまねをするつもりは全くない。
人は人であり、カミはカミだ。
住まうところが異なり、考えることもことなる。
そんなカミのところへ押し入ってきた小娘一人。
さっさと追い返せばよかったと、後悔したのもつかの間、彼にとって彼女は唯一の人となり、すでに取り返しがつかないほど懐深く彼の元へ入り込んでしまった。
寝返りを打ち、はだけた胸元をあらわにする娘に、男が布団をかけてやる。
異なる体温に、自分とは違う存在を意識する。
――もはや手放せない。
ゆるゆると朽ちていく運命の自分の、たとえそば近くだとしても。
どこからか彼でも彼女でもない何か、の気配が漂う。
人が住まう場所ではない領域の、人ではないものたちが、数を減らしながらも庭先でかけているのだろう。
昼間、日の光が苦手な連中が楽しげに笑う声がさざめく。
男は目を瞑り、礼奈によりそう。
意識がぼんやりとしていく頃、人ではないものたちの声もまた小さくなっていく。
日の光が大好きな連中が、再び活動を始めるまで、男は穏やかな睡魔に身を任せた。
再掲載8.23.2013/1.17.2013
→イケニエとカミサマ
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