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お題配布元→capriccio様
答えは簡単で、でも私には納得ができないものだった。
「だからさー、自分が僕のこと好きだってだけじゃない?」
「だからなんで?」
よくわからない事をほざいた友人が、ついでとばかりにあきれた顔をする。
私は、ただ、なんとなく目の前の人がかわいい女の子とでれでれ話すことが気に入らない、とそう言っただけだ。
それがどうしてそんな風な結論になるだなんて、よくわからないを通り越している。
「やきもちでしょ?」
「どうして恋人でもないあなたにやきもち焼かなくっちゃいけないの?」
私とこの人は、クラスメートでありただの友人だ。
多少の親しさを感じてはいるものの、それ以上でも以下でもない。
だいたい、わたしの好みは知的ないい男であって、細マッチョのこいつではない。
「頑固だなぁ」
「なにが?」
外国人がやるように大げさなまいった、のポーズをとってクラスメートが嘆く。その濃い顔でやられると、なんとなく様になってしまうところが恐ろしい。
やっぱりわたしの好みはあっさり和風知的男であって、こってり洋風筋肉男ではない。
「あのさ、じゃあ田中があの子と話してたらどう?」
同じクラスメートというカテゴリーに属する田中と、こいつがにやついて話していた学年一かわいくて学年一おっぱいが大きいと評判の女の子をもちだす。
確かに顔だけはいい田中とあの子が話している姿はどちらかというと眼福だ。
私は別にあのこ子のことは嫌いじゃない。
男に媚を売っている、と揶揄されているその性格も、あれだけかわいければ仕方がない。悔しかったら自分たちも媚を売ればいいのだ、と思っている。
ただ、こいつがでれる、ことが嫌いなだけだ。
「眼福じゃね?」
「だろ?」
意見が合うな、と握手をして笑う。
「で、どうして僕だとだめなわけ?」
「どうしてって」
客観的にみて、割とこいつもいい男の部類に入るらしい。
それをやっかんで、比較的仲のよい私にきつく当たる女子もいるが、別にたいしたことがないから放置してある。そもそもそんなことをされるいわれはない。
私とこいつはただのクラスメートなのだから。
だけど、そのただの、と思った瞬間、私はどうやら変な顔をしていたらしい。
「あのさ、じゃあ他のやつとあの子が話しているのを考えてみたら?」
言われてクラスメートたちを次々と思い浮かべ、順にあの子と当てはめていく。
合っていたり、合わなかったり。
でも嫌だ、と思った組み合わせはなかった。美女と野獣だな、と密かに思う人はいたけれど、それでもそれはそれで彼女のかわいらしさが引き立つな、と思わないでもない。
「で、どうして僕だけだめなの?」
私が難しい顔をして、どういう答えをはじき出したのかを察したのか、何時もより近い距離に詰め寄る。
やっぱり顔が濃いな、とか、これだから筋肉は、とかそんなことはどうでもよくなって、どうしてだか妙に緊張してしまう。
ただのクラスメートに緊張などする必要はないというのに。
「そういうのをさ、やきもちって言うんだよね、やっぱり」
「だから」
私の抗議の声は段々小さくなっていって、こんがらがった頭がショートしそうになる。
他は良くて、あの子とこいつが一緒にいたことだけが嫌がった理由。
それを考えそうになって、真っ白になっていく。
「難しいことじゃないでしょ?それは君が僕のこと好きってことでしょ?」
にっこりとわらって、手まで差し出されて、よくわからないままそれを受け取る。
「大丈夫、僕も好きだから」
さわやかな笑顔で言われ、言葉も出ない私は、そのまま引きずられるようにして彼に連れて行かれた。
付き合うことになった、と報告した友人の、「ようやく?」という言葉に納得しないまま、私とあいつはただのクラスメートから恋人同士となった。
やっぱりどこまでも腑に落ちないままだけど。
再掲載:4.23.2012/12.08.2011
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