夏の窓際ははっきりいって地獄だ。
冬の窓際とは価値が違う。
だけど、こうやってよそのクラスの体育の時間だけは、ここに座れてよかったと、真剣に思う。
全くわからない数学の時間は、頬杖をつきながらなんとか眠らないようにするのに精一杯だ。
だけど、この木曜日だけは違う。
私ははっきりと目を輝かせながら、思いっきり窓の外をのぞきこむ。
もちろん、髪の毛で教壇からは見えないようにしながら、それでも不自然な角度のまま固まった私は、不審そのものかもしれない。
笛の音とともに、この暑いのにサッカーをしている男の子の姿が見える。
五階からでは、その姿がはっきりと大きくみえるわけじゃないけど、このありえないぐらい良い視力の私にかかれば、はっきり区別ができる。
いや、たぶん近眼でもわかるはず。
裸眼でコンマ以下のトモダチがそんなことを言っていた。
恋する女子高生をなめるんじゃない。
好きな人の姿ぐらいいつだってどこからだってとらえてあげる。
しげしげと、目的の彼の姿を眺め、思わずため息をつく。
お約束のように、指名された声すら聞こえず見入っていた私は、ペナルティーのプリントを科せられることとなり、わけがわからない数学がますます嫌いな教科となっていく。
だけど、あのちょっとだけ露出の高い彼を見ることができたのだからよしとしよう。
無造作にプリントをかばんにつっこみ、はしゃいだトモダチの輪の中に入っていく。
やっぱり、木曜日は大好きだ。
どれだけ数学がわからなくなっても、どれだけ先生に怒られても。
私は木曜日が大好きだ。
私が、彼の姿をとらることができる限り。
3.27.2009update/6.24.2009再録