しつこく降りつづける雨を窓越しに眺め、訳もなくため息をつく。
「幸せが逃げますよ?」
丁寧な言葉遣いを操る幼馴染が、こちらへ笑いかける。
「うっさいなぁ」
乱暴な言葉で返すあたしに苦笑して、でも、ちっとも嫌がっていない。
そのことにほっとして、あたしはまた雨空をみつめる。
「梅雨明けになるまで待ってくれれば、どこか遊びにでもいきましょうか」
「……ほんとか?」
「僕が嘘をついたことがありましたか?」
「そりゃあ、ないけどさ」
「てるてる坊主でも飾っておいてください。きっと効きますよ」
この年でてるてる坊主を嬉々として飾る子ども扱いされたようで、ちょっとだけ腹がたつ。
だけどきっと、夜になったらこいつに見つからないようにしてこっそりてるてる坊主を飾りそうな自分がおかしい。
何から何までこいつの言ったとおりになっているようで悔しい。
でも、ソレが嫌じゃない。
十数年続いたその関係はちょっとやそっとじゃ変わりはしない。
仲の良い幼馴染。
兄と弟のような妹。
色気もかけらもあったもんじゃないこいつとの関係は、これからもずっとこのまま。
神様でもいてくれなくちゃ、きっと変わらない。
「虹、出るかな?」
「さぁ?出るためにはとりあえず雨があがらないと」
「ん、そっか。そうだよな」
流れ星にお願いするように、あたしは虹にお願いごとをする。
その方がずっと効き目がありそうで、だけどちっとも注意深くないあたしは、肝心の虹をいつも見逃してしまう。
こいつに言われて振り返ると、消えかかった虹がチラリとみえて、とてもお願いなんてできない。
いつもいつも綺麗、って見惚れるばかりで、それはあっという間に消えていってしまう。
あたしのお願いごとが大きすぎて、空が意地悪をしている。
そんな風に思うぐらい、あたしのお願いごとは叶わない。
こいつとずっと一緒にいれますように。
単純なのに難しくって、あたしは虹に頼るしか方法を知らない。
だからあたしは虹をまっている。
ずっと側にいられるように。
6.21.2008update/10.25.2008再録