こんなにもごつくって、こんなにも男臭いこいつこのことを、すこしだけかわいいだなんて思ってしまった自分の脳みそをシャッフルしてみたくなる。
「おいひい」
「食べるかしゃべるかどっちかにしな」
ぶっきらぼうに話していても、こいつに食べさせたくって作ったことがミエミエのメニューの前に赤面する。
どん、っと大盛りにのっかったとんかつに、栄養学的には間違っていそうな肉じゃがと出汁巻き卵。どれもこれもこいつの大好物だというものを用意しておいて、今さら冷めた態度をとったところでどうしようもないのに。ちなみに卵は甘い派であることは、とっくの昔に承知している。
むしゃむしゃと、気持ちの良いぐらい食べ進む彼をチラリとみながら、こじんまりと盛られたとんかつに口をつける。
うん、やっぱりあれほど練習したかいがあったと、本当は当分とんかつなど見たくも無いのに自然と顔がにやけてしまう。
「どうしたの?」
「ううん、べつに」
ごまかすように味噌汁に口をつける。
料理が苦手で何が悪い、と、言い張っていた私が不恰好でも一応料理と呼べそうなものを誰かのために作るだなんて。
きっと、以前の彼氏達や親兄弟が見たら目玉が飛び出そうなほど驚くだろう。
だけど、こんな自分が嫌いじゃない、のが不思議なところで。もっとも、親しい人には見せたくない姿なのは事実だけれど。
あっと言う間に平らげて、お腹をぽんぽんたたきながら満足そうにしている。
「おいしかったーーー、また作ってね」
本当にどうしてこういうところが素直に出来ているのだろう。
ひねくれまくって、もうどうしようもないほど捻じ曲がった私は羨ましく思う。おまけに、後片付けは僕がやる、とばかりに女物の小さなエプロンをひっかけただけで、じゃぶじゃぶと食器を洗い始めた。
大男が小さなシンクの前に立っている姿は、やっぱりかわいい。
どうしてこんな人にこの私が?という捻くれた感情はあるものの、やっぱりかわいいものはかわいいのだと、素直に納得する。
「二人でやったほうが早いから」
などという殊勝な言葉が私の口から出る日がくるだなんて。
見上げるほどの横顔をかわいいと思ってしまったのは、やっぱり内緒の話。
10.1.2007update/2.21.2008再録