19.おわり |
「翼ちゃん俺のこと好き?」 「はあ?何寝ぼけてんの、寝言は寝てから言ってよね」 にべもなくあしらうのはいつものことで、これはもう二人の間のゲームみたいなもの。 「冷たいなーー、俺浮気しても知らへんで」 「そうなったら簀巻きにしてその辺に吊るしてやる」 修士2年と1年生になっても相変わらずで、周囲も温かい目で見てくれている。 あれからお互いの家を行ったり来たりして週末は半同棲のような生活をしているけれども、 意地っ張りな私はまだ「好きだよ」と言えずにいる。 「いつになったら素直になんの?翼ちゃん」 「そのうちね」 そうはぐらかす。 だって流されっぱなしじゃなんだか悔しくない? だからこれはささやかな仕返し。 好きだよ、だけど言わない。 きっと今では私のほうが好きだという気持ちが大きいと思う。 だから言えない。 でも、今井君の誕生日あたりには考えておくわ。たぶんね。 「おひるご飯食べに行こ」 「はいはい、今日は学食?」 「うん、定食食べたい」 「じゃあ、急いでいきますか」 二人並んで部屋を出る。 今日も普通の一日が始まる。 |