16.学食にて |
夏休みとはいえ、お盆以外はお休みがないので毎日毎日きっちりと研究室へ日参する。 このあっついのにクーラーもないんだよう、ここって。文句の一つもいいながら実験をする。 失恋、したんだよね。一応あれから女友達が失恋パーティーなどを開いてくれた。実質ただの飲み会だけどさ。 だけど、なんか別にそれほど落ち込んでない、というか彼女の年齢に驚愕してそんな余裕なかったというか。 うーーん、どうしてだろう。 たぶんその原因の一端であろう後輩君が目の前をチョロチョロする。 「ごはん食べにいこー」 最近は今井君と一緒に行動することが、前にも増して多くなった。ごはんもほとんど一緒だし。 朝ひる晩コレだけ一緒に過ごせば情がわくってこと? そんな意地っ張りなことを考えながら一緒に夕食をとる。 あいかわらず整った顔だよなー、こいつ。私なんかのどこがいいんだろう。 「ひょっとして、悪趣味?」 「翼ちゃん、何の話?」 「うん、今井君って女の趣味が悪いのかなって」 うわ眉間に皺が寄ってるよ。なによ素朴な疑問を口にしただけじゃないの。 「あのね、翼。じゅーーーーぶんかわいいよ、俺にとっては」 「うーーん、やっぱり視力が悪いとしか思えないし」 あ、機嫌が急降下。喜怒哀楽のはっきりした人だなぁ。 「はあ、何を気にしとんのかしらんけど、翼は十分かわいいの。この話はこれでおしまい!」 打ち切られてしまった。 だってね学食で一緒に食べてるんだけど、視線が突き刺さるのよ女性達の。 なんであんたなんかが今井君の隣にいるの?って顔してるもの。さすがに大学生にもなって直接言ってくる人はいないだろうけど、 この視線の渦の中で食事をするのもなかなか神経つかうもんだよ。いくら私が図太くったって。 「明日からは購買がコンビニ弁当にしようよ」 視線にひるんだ私が提案する。 「やだ、飽きる」 「じゃあ、出前」 「あほか」 「そうだ、私んちで食べない?材料費折半してくれるんならご飯作ってあげるし」 我ながらいいアイデアだわ!こう見えても料理は得意だし、二人分なら一人分より効率がいいし、何より気分転換になるしね。 自分の提案にいい気になって喜んでいる私とは対照的に、なんとも複雑そうな顔をして黙ってしまった今井君がいた。 |