12.未練? |
セミナーから2週間、現在前期試験の真っ最中。修士学生にもテストがあるなんてーーーー!!という私の叫びもむなしく、
時間は着々と過ぎていく。おまけにレポートもあるし。さすがにこの時期は実験なんかはすこーしだけお休みしてテストにいそしむ。 こうやって忙しくしていると今井君と顔を合わせなくって済むしね。 あれから彼の態度は全く変わりなく、めちゃくちゃ緊張して研究室に来た私がバカみたいだった。 うーん、やっぱりあれは冗談だよね。そう言い聞かせようとするけれども、時々こちらを見つめる視線は妙に熱のこもったもので、 そういう目で見られるのに居心地の悪さと若干の嬉しさがあったりして。 私ってこんなに流されやすいやつだったっけ? そういえば助教授のことを考えないでいられるのは久しぶりのことかもしれない。 なんか彼女がいるのは決定的で、私の入り込む隙間なんてどこにもないのにね。 それを知っても前ほどショックじゃないのは、今井君のせいだろうか。 テストが終了したその日の夜、相変わらずの研究室のメンバーがプールへ行こうといいだした。 「は?先輩突然ですね」 「いやー、前から行きたかったんだけどさ、野郎ばっかりじゃ華がないと思って」 「じゃあ彼女と行けばいいじゃないですか」 「渡会さん、振られたばかりの俺にそれを言う?別に嫌ならいいんだよ、イヤなら。いいこと教えてやんないし」 「いやー、いいことってなんですか?」 必死に先輩のご機嫌をとってみる。斎藤先輩の情報網って結構侮れないのよね。 「ふふーん、最初っから素直にしとけばかわいいものを」 「だから、いいことって?」 もったいぶる先輩に先を促す。さっさとしとかないといつまでたってもいじめられそう。 「いやね、渡会さん。助教授がプールに行くらしいんだ。今週末」 ガーンとハンマーで殴られたようなショックを受けた。 助教授がプール?誰と?やっぱり家族じゃなくって彼女と? 助教授のことをそれほど気にしなくなったと思ったのに、やっぱり実際聞くとものすごく気になる。 ショックを受けて落ち込む私を、今井君がとても複雑そうな表情で見てた。 ごめんね、やっぱりまだ忘れられないや。 |