10.夏セミナー(1) |
待ってましたの夏セミナー。もともと同じ分野の学生さんや若手研究者が他大学の人たちと親睦を持ちましょうって催しなんだけど、
私としては助教授と親睦を深めたいのよ。他大学は関係ない。 でもね、この分野では女性はまだ数が少ないので、並以上の顔であればもてちゃうのよ、自然と。 私は平均並だから、まあこれでも一応声は掛けられたりするの。 うっとうしいなー、なんて思っていると自然と今井君がそばに来て追い払ってくれる。 優しいとこあるじゃん、って感動していると、なんと手を握ってきやがった。 「なにするの?」 「ごほうび」 わけわかんないし。いいから離してよ。 「だっていい寄る男を追い払ってあげたでしょ?これぐらいの特典がなきゃ」 だからどうしてそこに結びつくの。憮然として腕をブンブン振っていたら、さすがの彼も手を離してくれた。 「翼ちゃんは照れ屋さんだから」 なんておでこをつっつく。懲りていないのね、全く。 でもこういう軽いところもいまいち本気にできない理由なんだよね。今井君って誰にでもそんなこと言ってそうだし。 はあ、ちょっと残念って思っている自分がわかんない。 気を取り直して、助教授を探すと、なんだかお友だちと一緒だ。しかも柄が悪い、というか威圧感がある人たちばっかり。 あの人たちも先生なんだろうか。 気がつかれないようにそばに行く。 あれ?先生のかばんからケータイがでてきた。や、正確にはお友だちに探られたっていう方があたっているけれど。 先生って確か持ってませんでしたよね?携帯。 「私は学校か家におりますので、必要ありません」って常々言ってたじゃない。 どうしていきなり持ってるの?しかも私たちにも隠しているし。 うわ、先生が必死になってケータイを取り返そうとしてる。 そんなに見られちゃまずいものがあるのかしら。 もしかして女の番号?とか? やっぱり彼女がいるって本当ですか? |