5.後輩君との関係 |
あの日からさりげなく探りを入れているんだけど、助教授のガードは固い。 もともとプライベートなことは一切話さない、持ち込まない人だけれど、少しぐらいは漏れてきたっていいじゃない! そんな中、助教授が国際学会に出席するためフランスへ旅立った。2週間だけどね。 だけど、その2週間のなんと長かったことか。 先生の(心からのじゃないけれど)笑顔が見れない日々がこれほど辛いとは。 実験にもやる気が起こらないってものよ。 そう言いながら自分の机でコーヒーを飲んでいるとまたもや今井君がやってきた。 私が一人でいると必ずやってくる。 なんかもうお約束のようだ。 「せーんぱい、なにさぼってんの」 「うるさい。さぼってんじゃないの、論文読んでるの」 「はいぃ?辞書もださんと?」 しまった、カモフラージュに辞書もださなきゃ、意味ないじゃないの。 慌てて辞書を出す私に 「そんなにあわてなくってもいいって。さぼってんのなんか丸わかり、先生がおらんからやろ?」 その通りなんだけど、あいかわらず癪に障る男ね。 しかしなんだってこの子は私に付きまとうんだろう? 毎日付き合おうって言われるけど、到底本気だとは思えないんだよね。この人。 だってなによりこいつって結構いい男なのよ。 顔だけ比べると助教授よりはるかにいいかもしれない。 おかげでうちの大学はもとより近所の女子大のお嬢さん方からも熱烈なアプローチがあるらしい。 思い余って研究室まで押しかけちゃう子もいるみたいだしね。 そんな子達には思いっきり冷たい態度で接しているみたいなんだけれど、それでもそういう女の子達は後をたたない。 それだけこいつがモテルって証拠だよね。 それに引き換え、私はお世辞にもかわいいとはいえないし。がんばってみれば愛嬌がある。 としか誉め様がないのよ。気が強いし口も悪い。今まで真面目に告白されたこともない。 どう考えても釣り合わない。助教授となら釣り合うか、と言われればそうじゃないけれどね。 でも私は自分の容姿に自信がないせいで、欲しいものは待っていちゃ手に入らない、 積極的にもぎとるのよ!っていう精神が身についているのだ。 あきらめません勝つまでは! |