先輩以上恋人未満vol.3(6.16.2004)
3.先生の笑顔
片思いしている私は研究室を選ぶとき、まっさきにここを選んだ。
理由は、言わずもがなの一ノ瀬先生。
チョコもプレゼントも拒否されてきたけど、研究室の一員になれば、ひょっとしたら受け取るぐらいはしてもらえるかも。 だいたい毎日理由もなく会えるもんね。これはまさに最大の利点よね。
有機化学が苦手なのにも関わらず、不純な動機で決定してしまった。
おかげで今研究で苦労している。センスないし、勉強苦手だし。
おまけにチョコ受け取ってもらえないし。

はぁ・・・。

今日の一ノ瀬先生もさわやかに誰にでも優しく話し掛けている。
特定の誰かに優しくするようなことはしないんだよね。
それは教育者としてはすばらしい態度なんだけれど、 乙女心としては微妙にこう、なんていうのか寂しいのよ。

資料を読んでいるフリをしてこんな不埒なことを考えていたら、背後から声がかかった。

「渡会さん」

助教授の声が聞こえる。幻聴かな。

「渡会さん!」

ええ!本物だ。びっくりして慌てて椅子から立ち上がる。ぼけっとしていたところを見られたかな?

「渡会さん、この間の実験の結果まとめてありますか?」
「え?この間ですか・・・・・・えーっと・・・・・・・・・してません」

忘れてたよ、完全に。どうしよう。

「はぁ、そうですか。今まで何されてたんですか?」

う、笑顔でそうきますか。いえいえ私が悪いのですが。

「すみません」
「渡会さんは有機化学に不向きみたいですからねぇ、配属変更されても結構ですよ」
「いえ、先生、がんばりますからここに置いて下さい」
「何度目ですか?そのセリフ」

にーーっこり。先生、目が笑ってないです。助教授は優しい言葉遣いだけれども、 言っていることはいつも辛らつ。言わせる私が悪いのだろうけど。

いつもの今井君のちょっかいも、ものともせずなんとかその日中に資料のまとめが完成した。
早く助教授のところへもっていこう!そう思って助教授室の前へ行くと、見たこともない笑顔でメールを打つ先生がいた。
ねぇ先生。誰にメール打ってたの?


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