先輩以上恋人未満vol.1(6.5.2004)
1.はじまり
外には燦燦と降り注ぐ太陽。
何が悲しくて薄暗い部屋にいなきゃいけないの?
怒りの源とは違うところへ八つ当たりしてみる。
キレイにラッピングされた箱を横目で見ながらためいきをつく
雨雲をしょった私に、話し掛ける人もいなくて、どんどん気分が落ち込んでいったとき、 いつもの能天気な声が聞こえてきた。

「翼先輩あいかわらずご機嫌うるわしゅう」
「やかましい、これのどこが機嫌がいいんだ」

あいかわらずうるさいわね、今井のやつ。
こいつは今年度からうちの研究室に入ってきた4年生だ。
なぜだか知らないけれど、最初から気に入られて、毎日毎日からかわれる。
今日だってそう。私が先生に誕生日プレゼントを渡そうとしたら

「個人的なものはいただかないようにしているんですよ。すみません」

なんて、先生の顔をしてあっさり拒否されたのよ。
おかげで朝からテンションまっさかさま。受け取ってももらえないプレゼントはどうすりゃいいのよ!

「ええかげん、あきらめたらどうです?」
「大きなお世話よ。あきらめないったらあきらめない」
「しつこい女は嫌われますよ」
わかってるっつーの。脈がないことぐらい。でもひょっとしたら、もしかして両思いになれるかもしれないじゃない。 可能性はゼロじゃないのよ、先生に恋人ができない限り。

「ゼロやと思いますけどねー、可能性」

今日も今日とてしっかりとどめをさされた気分だ。毎日毎日これじゃあ、さすがの私の神経も傷付いちゃうのよ。

「で、僕と付き合いません?」
「い・や」
「そんなにはっきり言わんでも」
「しつこい男は嫌われるっちゅーの」

こんなことが毎日繰りかえされている。
まあ今の軽口で気分が大分上昇したけど。

渡会翼、修士1年生。現在助教授の一ノ瀬響先生に恋してます。

全く相手にされてないけど。

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