8.言えない誕生日・前 |
学食のテラスでお昼ご飯を食べる。あきちゃんと特に仲良くなってから、
それ以外の人とも仲良くなることができた。あきちゃんに感謝。 「なににやけてんの?」 右手の指輪をみつめながらニコニコしている友達にあきちゃんがつっこむ。 「へっへー、もらちゃった」 そうやって見せてもらったのはかわいいリング。小さめの石がはまっているシンプルなタイプのもの。 見せて見せて、と周りの子も注目する。 「誕生日にくれたの」 なんてハートを飛び散らせながらおっしゃる。 いいなぁ、なんて素直にうらやましいって顔をしていたら、あきちゃんにすかさず突っ込まれた。 「ちーちゃんは何もらったの?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」 意外な言葉につまってしまう。つまり一之瀬さんに何をもらったか?ってことでしょうか。 「えっと、べつに・・・」 「ええ?だって先週でしょ、誕生日」 そう、私の誕生日は先週だったのだ。あきちゃんたちがお祝いっていって飲みにつれていってくれた。 そこのお店はごはんもすごくおいしくて大満足だった記憶が・・。 「もらってない・・はずないよね、助教授まめそうだし」 「んーっと」 へへって笑顔で誤魔化そうとするも、彼女にそんな手は通用しない。 「はぁ?なにやってんのよあの人。誕生日忘れたとか言うんじゃないよね」 尚も笑って誤魔化そうとする私に畳み掛ける。 「あ、デートしたとか、うんうん、そうよね、ちーちゃん」 いや、してないです。誕生日からこっち会ってないもん。 みるみるあきちゃんの顔が険しくなる。コメカミに怒りのマークがついてないのが不思議なぐらい。 「ちーちゃん、携帯かして」 「へ?」 この状況でどうして携帯がいるのかってことはわからないけれど、彼女の迫力に思わず携帯を渡してしまう。 手慣れた手つきでアドレスを探し出し、どこかへ電話をする。 あっけにとられて見守っていると、なにやら相手と口論になっているみたい。 「友達のあきです、伊藤亜紀」 「へ?今昼休みでしょ」 「誕生日、そう、ちーちゃんの」 「ええ?知らないの?聞いてない?」 「うん、そう先週」 会話が進むにつれなんだかあきちゃんがこっちを睨んでいる。相手誰なの? 「あ、OKかわるね」 そう言って携帯を差し出された。元々私のだけれどね。言われるままに通話を引き継ぐ。ケータイの向こうから、 大好きな人の声が聞こえる。 「響です」 「え?ええ!響さん?」 「先週お誕生日だったんですね」 なんか心なしか声が怒っているような。 「あ、・・・・・・・・・・はい」 「今日は迎えに行きますので、6時に側の本屋で待っていてください、いいですね」 珍しく言い切りの形で会話が終わってしまった。 どうしよう、どうしてだかわからないけれど、怒らせてしまったみたい。 縋るようにあきちゃんを見るけれども、こちらもなんか肩をすくませてため息をついているし。 私何か悪いことした?って周りに聞いてもあきれられるばかりだし。 どうしよう、このまま響さんに会うの? |