こんな恋の深め方vol5 7.2.2004
5.恋愛と冷酒とウーロン茶
 前期の授業もやっともうすぐ終わりってところにきた。大学生活も2年目だけれども、 要領の悪い私は今ごろ少し慣れ始めたってかんじかも。
キャンパスももうすぐ夏休み!という気分が漂い、なんとなくはしゃいだ雰囲気がする。
そんな浮かれた学生さんたちのなか、一人浮かない顔でアイスティーを飲む私。
すかさずあきちゃんから突込みが入る。

「何浮かない顔してんの、幸せ者のくせにー」

肘でツンツンつつかないで、あきちゃん。幸せ者って・・・、そうだけどさ。

「別にー」

無駄な抵抗だとは思うけれど、一応そうやってごまかす。案の定彼女の探究心に火をつけてしまったらしく、 このままあきちゃんと飲みに行くことになってしまった。

 連れてこられた店は、なんと日本酒のうまい店。あきちゃんセレクトね。彼女はかなりいける口、 半升飲んだぐらいでは全く変化がない。でもね、私お酒飲めないし、第一まだ未成年なのよーーーー。 などという反論を口に出すことができるはずもなく、ううんできても無駄だったと思うけれど、そのお店に連れ込まれてしまった。
仕方がないのでウーロン茶を頼むと、あきちゃんはナントカっていう日本酒を頼んでるし。

「で、どうなの助教授とは」

う、いきなりですか。聞きたい聞きたいっていう目で訊ねてこられても。

「どうって、別に」

なんにもないよう、おもしろいことなんて。一ノ瀬さんはいつも優しくて私のことを気遣ってくれて。 ほんとに申し分ない相手なんだから。

「だって、あんたのとこ親公認でしょう。ぶっちゃけどこまで進んだかなぁ、なんて」

いきなりな質問に、ウーロン茶を落としそうになってしまう。やっぱりこっち方面ですか、あきちゃんの好奇心って。 こっちの内心を知ってかしら知らずか彼女は冷酒をあおっている。ちょっとピッチ早いんじゃないの?

「や、どこまでって言われても」

 笑顔で言い淀む。
そう、なんだよね。一ノ瀬さんって優しくってマメで頼もしくって・・・・・。
でもね、私たちって何にもないのよう。
ちゅーしかしてないし、しかも軽いやつ。
きっと浮かない顔をしていたであろう私を見て一瞬で悟るのが彼女のすごいところで。

「ひょっっっっっとして、まだ。とか??」

わかっているくせに、念のためって感じで聞いてくる。いや、そんなあからさまな。

「ええ!もう4ヶ月ぐらい経つよね、で、なーーーーーんにも?」

 そんなに強調しないでよ。なんだか悲しくなってくる。
だいたいデートの内容って待ち合わせ、昼食、水族館やら映画やらショッピング、で、夕方私の家へ送ってくれる。 たまーに、母の強引な引き止めによる家族一緒の夕食。
なんだか高校生よりも健全なデートじゃない?これって。
別に不満があるわけじゃないけれど。そうじゃないけれど、なんだか物足りなくなってしまうのはやっぱり不満があるってことかしら。

「いや、物足りなくなるってのはちーちゃんが正常だよ」

そうやって慰めてくれる。
彼は十分に優しくしてくれるのに、それだけじゃ足りないなんて、私ってなんてわがままなんだろう。

「わがままなんかじゃないって。それだけじゃだめだけど、肌を重ねることだって大切なことだと思うし」

 そういうあきちゃんは彼氏とラブラブだ。この前さんざんのろけられたもの。彼女たちの関係はよく喧嘩をしてすぐに仲直りをする。 お互い言いたいことを言い合って、でも折れるところは折れる。とても対等な関係にいるようで、正直うらやましくなることがある。 やっぱり私と一ノ瀬さんじゃ彼ががまんすることが多いのじゃないかしら。私も言いたいことが言えている、 とはとてもいえない状態だし。それにただでさえ忙しい彼にこれ以上わがままをいって困らせたくないっていうのもあるし。
 また思考の渦にぐるぐる巻き込まれているとあきちゃんがとんでもないことを言い出した。

「ここはやっぱりストレートに“どうして抱いてくれないの”って襲っちゃえ」

 や、絶対そんなことできないって。あわてて反論しようとする私の目の前では今日何杯目?っていう冷酒を飲み干すあきちゃんが。
いくらお酒に強いからって、そんなに飲んで酔いつぶれてもしらないからね。
どんどんハイテンションになっていくあきちゃんを尻目に私は答えの出ない問題を一生懸命解いている状態だ。
こればっかりは確かにあきちゃんの言う通り、相手に尋ねるしかないはずで、だけれどもそんなことはできはずもなく。
私の性格はそう簡単には直らないらしい。
そういえば私、一ノ瀬さんのお家も知らないや。
そんなことに今ごろ気が付く私はやっぱり鈍いのだろうか。


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