こんな恋の深め方vol2 6.14.2004
2.見合いにまつわる攻防戦(2)

あれからずっと悩みっぱなしの私は、久々のデートなのに浮かない顔をしていた、らしい。

「千春さん、気分でも悪いのですか?」
「ううん、響さん。ちょっと寝不足なだけ」

ごめんなさい響さん。寝不足なのは本当なんだけれどね。メールのやり取りではなんとかごまかせても、面 と向かってでは、ごまかせないよね。
しかし、どれだけ考えても言えないわ!
響さんを信用していないわけじゃないのよ。ただいきなり親に会ってくれっていうのはヘビーすぎない?
相変わらずグルグル考えを巡らしている私を心配そうに眺めている。

「悩み・・がおありなのですか?」
「えっ。えーっと。いいえ、ないですよ」

無理やりニッコリ笑い、彼の手を取って歩き出す。今日は彼の希望で植物園に来ている。 なんでも実験で行き詰まったときに植物の近くに行くとほっとするらしく、前からちょくちょく来ているらしいの。 はぁ、私も植物に癒されたいな。温室の中のサボテンの前で考える。
サボテンを眺めながら再び考え事をしていると、突然響さんから声がかかった。

「千春さん。あのですね・・・・。実はこの間教授からお見合いの話がありまして」
「お見合い!!!」

頭の中を覗かれたのかと思って、思わず大声を出してしまった。周りにいるお客さんがこちらを振り返る。う、かなり恥ずかしい。
一ノ瀬さんの手をひき、温室の先を急ぐ。
えっと、今お見合いがあるとか言ってませんでした?

「おみあい、するの?」

自分の事は棚に上げて、訪ねてしまう。だってやっぱり嫌だもの。響さんがお見合いだなんて。そんな私の態度に慌てて手を振る。

「いえ、そんな。僕には千春さんがいますのに、お見合いなんてできません。写真も見ていませんし」

心の底から、ほっとする。こんなことで喜んだりするなんて単純かもしれない。

「それでですね、断る理由に“いま真剣にお付き合いしている人がいます”って言ったら、 ぜひつれて来いって言われてしまいまして・・・」

え?つまりそれって・・・。

「はい、申し訳ないんですけどいつか教授に会っていただけませんか?」

会うって、会うの?教授先生に。でも私って単なる彼女なんだけれど、そんな立場の人間が会ってもいいの?
不安そうに彼を見ると、彼はなんだか緊張している。
私が教授に会うっていうのがそんなに緊張することなの?

「ですから一度、千春さんのご両親にお会いしとかないと、と思いまして」
「両親・・・に?」

教授に会う、からつながらないよ、その言葉。いったいどういうこと?
思考が完全にショートしてしまった私を尻目に彼はあくまでマイペースに続ける。

「ええ、正式にお付き合いを許していただいて、できれば婚約まで進みたいな、と」
「こーーんーーやーーくーーーーーー??????」

再びの大絶叫に今度こそ人目をひいてしまった私たちは、そそくさと温室を出て、近くの花壇の方へ歩いていった。

「婚約って、婚約でしょ?」
「はい、そうですよ。たぶんその漢字で合っています」
「いえ、合ってるとかそうじゃなくって、あの、本気です?」
「はい、もちろんです。私は千春さんさえよろしければ今すぐにでも結婚したいぐらいですから」

にーーーっこり。ちょっと下がり気味の目じりをさらに下げて微笑みかける。

待ってよ、私その笑顔に弱いのよ。

「だって私たちまだ3ヶ月しか付き合っていませんよ。婚約だなんて」

しかもそのうち2ヶ月は私がうじうじしていたおかげできちんとした交際期間に入れたくないんだもん。

「ええ、わかっていますよ、もちろん」

一ノ瀬さんは微笑みながら、でも真剣に私の目を見て話し掛けてくる。

「一緒に歩いていこう、そう思えた女性は、千春さん、あなただけです。たぶんこれから先にも現れないでしょう。 ですから、私は千春さんと結婚したい。そのためには今確かな形としてあなたのご両親にも認めていただきたいのです」

静かに、でも熱く語る一ノ瀬さんは、いつもよりもかっこよく見えて、私はその姿にしばし見惚れてしまった。 惚れ直すってこういうことなのかな。

「千春さんは、まだお若いです。将来を縛ってしまうことだと重々承知しています。 でも私はそういったことをしてでもあなたをそばに置いておきたいのです」

優しいだけの彼じゃない。こんなに激しい一面も持っていたんだ。
それにしても私のことをそこまで考えていてくれるなんて。

「すみません、千春さん。色々理屈付けしましたけれど、結局は私のわがままなんです。私は、あなたを手放したくない」

自嘲気味に呟く一ノ瀬さんは相変わらず優しげに笑いかけてくれる。 この笑顔が好き。結婚とかは正直言ってまだわからないけれど、ずっと一緒にいたい、そう思える人だから。

「私も響さんと一緒に生きたいな、ずっと」

そう答えた私をとても嬉しそうに抱きしめて「千春さん大好きです」って囁いた。



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