こんな恋の深め方vol1 6.11.2004
1.見合いにまつわる攻防戦(1)

一ノ瀬さんとなんとか向き合うことができたあと、私の毎日は急に色がつき始めたみたい。 毎朝コーヒーを飲んで朝食を食べる、なんてたわいもないことも、彼のことを考えると、 とたんに意味のある楽しい出来事に変わってしまう。ちゃんと食べてるかな?とか、今なにしてるだろ?とか。 口に出して言ったら周囲が引いちゃうぐらい響さん中心に世界が回っている。
でもそんな幸せボケした状態が長いこと続くわけもなく。しかもそれは意外なところから波乱を巻き起こしていった。

ある朝、オレンジジュースを飲みながらぽけっと新聞を読んでいると、大したことじゃないっていう口調で母親が、

「千春ちゃん、あなたもそろそろお見合いしてみない?」

なんてのたまった。
朝はどちらかと言うと苦手で、起きるまでに時間のかかる私は、言葉はわかったけれども、その意味がわかりかねていた。

「なんて顔してるのよ。だからね、お見合いしなさいって言ってるの」
「ええ?」

ちょっと待って。今お見合いって言いました?おかーさま。

「そう、お見合い。実はねー、おかーさんいいお話もらってきたのよ」
「え。ちょっと待って、私お見合いなんてしないよ」

はっきり言っておかないと、この人は暴走しかねない。

「どうしてーーーー。ほんとにいいお話なのよ。ね、あなた」

隣の席の父に同意を求める。つまり父も一枚噛んでいるってこと?

「そうだよ、千春。私の部下なんだけどね。とってもいい青年なんだ。お勧めだぞー」

勧められても要りませんって私。
でも、どうして急にお見合いだなんて言い出すの?この二人。

「だって、千春ちゃんもうすぐ二十歳じゃない。私が幸さんに出会ったのは19歳の時なのよ」

そうでしたね。この二人、19歳と24歳のときにお見合いで出会って結婚したんだったよね。
しかも今でもラブラブ万年新婚カップルだし。

「だから、千春ちゃんも早くいい人見つけて結婚しないと。私若いおばーちゃまになるのが夢だったのよ」

絶対後者が望みね!私まだ結婚なんて具体的に考えてないし、まして子どもだなんて!

「きっと、千春もそういう相手に出会ったらすぐわかるよ。私たちのように。ね、春子さん」

あ、いえ、そこ朝っぱらからイチャイチャしないで。
そんな理由で娘にお見合いを勧めないでよ。

「私、しないから」

もう一度はっきりと拒否。

「えええええええええええ。千春ちゃんってば奥手だし、女子大だから相手がいないでしょ。いき遅れちゃうわ」

女子大はあなたの推薦です。奥手かどうかは・・・・・・・・・どうなのかしら。
それに今は響さんって言う人がいるんだから。

「ひょっとして千春、彼氏いるのかい?」

えっと、当然そうなる、よね。でも、響さんを紹介するのはちょっと躊躇う。 私たちは恋人同士だと言えるけれども、親に紹介するレベルか、と言われると首をかしげちゃうし。
響さんとはゆっくり確かめ合っていきたいって思っているから、今そんなに重いことを相手に課すことはしたくないもの。
私の沈黙を同意とうけとったのか、母親がキラキラしたお目目で尋ねてくる。いくつになっても恋話は興味を引かれるものよね。

「千春ちゃん、だれなの?」
「誰って・・・・・・・」
「言えないような相手なのか?」

お見合いを勧めておいて、娘に恋人がいるとなると、とたんに不機嫌になった父が詰問する。
いえない相手じゃないよ。定職についてるし、優しいし、まじめだし。でもね・・・。
そんな私の逡巡などお構いなしに、強引な母が次のことを決めてしまった。


-1ヶ月以内に彼氏を連れてくること、そうじゃなければお見合い決定

私に拒否権はないってこと??


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