「さくら、それとってくれる?」
「はい」
どこかの夫婦みたいな会話が成立する叔父と姪。
アメリカの生活にすっかり馴染んで、こちらでもあいかわらず仲良くやっている、と思う。
「いいかげんさくらもあきらめたらどうですか?」
あれからすぐ私を追いかけてきた左京はちゃっかり同じ大学に籍を置いている。経営学だのを学ぶためだとかなんとか言って、実家の人間を説き伏せてやってきた。
私としてもこの広い大陸で友人が側にいるのは何かと心強いけれど。
「あきらめるって、30歳にはまだまだあるじゃない、せっかちねぇ、左京も」
「そうそう、まだまだまだまだ時間はあるから」
おじさんと左京の小競り合いももう日常の出来事。
こんなのでもお互いを認めている部分があるから、仲が悪いわけじゃないんだろうなぁ。
「そういえば、まだあいつから手紙きてるの?」
あいつ、とは私が外の世界で初めてできた親友の片岡君のこと。
3つ目の春が巡ってきても、あいかわらず彼とは友人関係を続けている。
海を隔てて距離があるので手紙やメールといった手段に頼りがちだけれども、それでも彼との関係が切れないでいることを嬉しく思っている。
そうしてまた季節は巡る。
再び私たちは出会うことができる。新しい気持ちで。
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