とある聖女の物語/プロローグ

 お姫様は王子様と幸せに暮らしました。
よくある御伽噺の一節を繰り返し思い出しながら、王女は己が今置かれた状況を振り返る。
簡素な部屋に、質素な寝具。申し訳程度に活けられている花は、庭で摘み取られていたただの野草。
今までも自分の生活からは考えられないほど何もないこの部屋を、ぐるりと見渡す。
彼女に与えられたのは、教典と僅かな私服。その私服ですら、飾りもつけられてはおらず、おそらく町娘と変わらぬ衣装なのだろう。
王女は、僅かにあいた天井近くの明りとりの窓に向かって叫ぶ。

「どうして!どうして私がこんな目にあわなくっちゃいけないの?」

だが、その声は誰にも届くことはなく、ひっそりと夜の闇へと消えていった。



1.11.2011
++「Text」++「とある聖女の物語・目次」++「戻る」++「次へ」