連日の残業続きで、さすがに疲れている。
帰宅のラッシュにあわないのは助かるけど、この時間だと酔っ払いもいるしねぇ。
そういえば、冷蔵庫に何もないよね、なんか買って帰らなくっちゃ。
そんなことを考えていたら携帯に着信アリ。
メール?
誰からだろう。メールをするような友達はあんまりいないのに。
不信に思って画面を覗き込むと一行だけのメッセージ。
“メシ作ってまってろ”
こんな自分勝手なメールを送ってくるやつに心当たりは一人しかない。
世の中に溢れていてたまるか、こんなやつ。
私は疲れているの、お家に帰ってご飯食べて眠るんです。
どうしてそんなわがままに付き合うと思うかなぁ。
ブツブツ言いながらも自宅へ降りる駅とは違う駅に降りる。
無意識に24時間営業のスーパーに立ち寄り材料を買い込む。
そうそう、あそこの冷蔵庫にもなにもないからね。
慣れた道のりを歩いて、慣れた手つきで玄関の鍵を開ける。
誰もいない真っ暗な部屋の電気を付ける。
ここまで来てハッと正気に戻った。
私ったらどうしてこんなところに来ているの?
しかも手には食材ぶらさげちゃって。
自分の意志のなさに愕然とする。
どうしてこういつもいつもやつの言いなりになってしまうのか。
ため息をつきながら椅子のうえに掛けてあるエプロンを手に取る。
結局ご飯作ってるし。
惚れた弱みってこと?くやしいけど。
夕食と言うには遅い食事を作りながら彼が帰ってくる姿を想像する。
暖かい料理と笑顔でおかえりなさいっていう私。
やっぱり私って健気だよね。
あんなやつにはもったいない。
くやしいので自分で自分を誉めてみた。
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