09.冷たい手

 少しだけおしゃれな飲み屋で取り残されたようにオレンジジュースを飲む。
私一人だけソフトドリンクを飲んでいるなんて周囲は気がつきもしないだろう。
こういう雰囲気は嫌い。落ち着かない。
友だちの代打でなければ合コンなんて来ないのに。
風邪を引いてしまった友達の顔を思い出してはため息をつく。
普通ならこうテンション低い女がいたら盛り下がるだろうに、そんなことにはおかまいなしに盛り上がっている。
やっぱり落ち着かない。トイレに行く振りをして帰ってしまおう。
頃合を見計らってこっそり帰り支度を始める。女友達もその相手もお互いターゲットを確保してせっせと口説きにかかっている。
ここから本物の恋愛に移行できるのは何パーセントぐらいなんだろうか。
いや、そんなことお互いわかっているのかもしれない。わかっていて敢えてそれにのる。
私にはできない。
 
 トイレから出て店の出口へ急ぐ。
誰も追いかけてこないところをみると、本当にどうでもいい存在だったらしい。
そうなることを望んだくせに、少し寂しい気持ちを抱える。やっかいな・・・。

 扉から出た瞬間左手首を掴まれた。
瞬間、あまりの冷たさにわけもわからず驚く。
振り向くと図体のでかい男が立っていた。確かこの人も合コンのメンバーだったはず。

「何か?」
「俺あんたが気に入った。ホテルに行こう」

あからさまな誘い文句。しかも断られるはずがないって顔をしている。
ここまで自信満々だとかえって清清しい。

「行くわけないでしょ」

そっけなく返す。

「うーーん、そんなわけないでしょ」

 こいつ、ここまで自己中なのか。何考えてるんだろう。いや、意外と考えてないのか?
思考を巡らす間にも私の身体はなぜだかホテル街の方へひっぱられていく。
たまには流されるのもいいかもしれない。どうせ今夜だけだし。
そんな危ない考えが頭をよぎる。アルコールなしでも酔えるのか?私。

あの手に掴まれた瞬間、この自己中男に捕まっていたのかもしれない。
認めないけどね。

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6.26.2004
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名前もでてない二人ですがシリーズ(?)第3段です。
出会い偏
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