08.境界(裏)

 ハリネズミみたいな女だと思った。
合コンで最初に会ったときの印象。
誰も彼女を攻撃する人はいないのに過剰に敏感になっている。
笑ったらかわいいのに・・・。
そう思ったら視線はずっと彼女を追っていた。
あからさまにつまらない顔をしている彼女を誰も気に掛けることもなく、周囲は盛り上がっている。正直俺もこんな場は苦手。
酒に酔ったフルをしてしなだれかかってくる女も嫌いだ。
据え膳食わぬわ・・なんて冗談めかして言ってくるやつもいるが、そんな連中をいちいち相手にしていたら身が持たない。 興味もないしな。
 トイレに行くフリをして帰ろうとした彼女を捕まえた。一瞬何かに刺されたような感覚に陥る。 どうして彼女は頑ななまでに他人を拒否するのだろう。
ますます興味が湧いた。

 合鍵を持つ関係になってもお互いの関係は曖昧なままだ。
自分自身そんな不安定な関係に不安を覚えないといえば嘘になる。
でも、言葉にすれば何かが逃げていくような気がして。
いや、それは言い訳だ。
この関係が居心地がいいのも確かだから。

祥子は何も望まない。物も時間も、ひょっとすると愛情すらも。
つかみ所がない女。そういい捨てることができれば簡単だろうに。
振り回しているようで振り回されているのは自分の方だ。

 彼女にならと、自分をさらけ出しそうになる。自分の想いの重さに嫌気をさされるのではと、躊躇する。

踏み込まないのは自分。

 この先どうなるのかはわからない。このままでいいとも思っていない。
彼女が俺の元から離れるはずはない、と単純にたかをくくっているわけじゃない。
いつでもどこか飛んでいってしまいそうなやつだから。

 言葉で縛れたらいい、どこにも行かないように。


境界-表バージョン-
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6.29.2004
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名前もでてない二人ですがシリーズ(?)第4段です。
女性の方の名前でてきました、”祥子”ちゃんです。
男性の方はそのうち
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