2010
相馬野馬追
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薫風 〜伝統とお祭と〜 小高郷・小高神社 古式の神事を継ぎし清閑な社 7月25日 年に一度の伝統行事 それは郷の人々の祭の日 祭の本質を垣間見る 小高の人々の野馬追が始まります |
| 25日 午前9時 陣羽織姿の騎馬武者達が境内に集まってくる 他郷の軍者や侍大将も揃い始めた 総大将殿、ご到着ーっ! 境内に声が響く 総大将殿の御到着であるっ! 幹部諸侯は整列のことっ! 総大将殿が宇多郷の副軍師、侍大将 そして付役たちを従えて到着された |
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儀式に参列する役付武者達 社の中から祝詞の声が聞こえてくる 神事の前の儀式は静かに厳かに行われる 境内にはサムライ達の家族や友人 そして野馬懸を見に集まった観覧客達が 古式の神事を始まるのを待ちわびていた |
| 小高の若き螺役達 儀式が終り総大将や役付武者は 境内の東側に設けられた観覧席へ移動する 野馬懸の開始を伝える螺の音が 長く長く吹き鳴らされた |
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総大将殿に申し上げます。 それがし、小高郷御先乗 今村であります。 只今より野馬追い込みのために 小高郷騎馬、出立致します。 おだやかに口上をする今村殿 前日のお行列や雲雀ヶ原で聞いた 他のサムライの猛々しい口上とは違う 静かで、深みを感じる口上 小高の人達の心を表しているような口上だ |
| 今村殿に続いて境内を出立するサムライ達 野馬懸の行事進行は案外知られていない 騎馬武者達が神社を発った後 境内では相馬民謡・踊りの奉納が行われる 御小人達が素手で荒馬を捕らえる 野馬懸の光景はまだまだ先だ 神社を発った騎馬武者は小高の町中を行列する 行列を見るために先回りしてみよう |
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神社の南側から小高川沿いへ すぐに行列が見えてくる 川沿いの道を進む騎馬行列 威風堂々…… と言うよりは、和やかな雰囲気 戦に赴くというよりも 「お祭り気分」 といった感じか |
| 小高駅前通り 行列は町中を通り、駅前の通りに現れる ここではサムライ達も凛々しい表情に まさに相馬野馬追のお行列 勇壮な行列は見応えあるものだ しかし多くの観覧客は行列のことを知らず 「いつになったら野馬懸は始まるんだ?」 と、境内で待ちわびているのだろう |
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駅前を曲がって再び神社方面へ 常磐線沿いの道を歩く騎馬武者達 電車の中からこの光景を見たら どんな風に感じるだろうか…… 野馬追を知らない人なら驚くことだろう 260号線の高架下をくぐって神社の東側へ 再び小高川沿いまで戻ってきます ここが野馬追い込みの開始地点です |
| 追い込む騎馬の順番を決めるところ 1回につき6頭か5頭になるように! 5頭の組は上手く乗れる人を中心に! まとめ役のサムライが説明する 2回目はもう決まった? じゃあ3回目! んじゃ3回目、はい。 つられて手を上げる侍たち 3回目何人いる? 6人? 1、2、3、4………多くね?(苦笑) 順番を決めるのも一苦労のようだ |
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神社側から聞こえてくる螺の音 追い込みを始めよ、という合図だ 発馬地点の螺がそれに応える 螺の音をもって伝える古からの行事 向う側の小さな小さな螺の音が 伝統をより深みのあるものに導いている 騎馬武者に囲まれた裸馬 発馬係が合図を出すと 野馬追い込みの一団がゆっくりと歩き始めた |
| 緑の田んぼを風が吹き渡っていく 一面の緑が風を受けて波打つ あたかも海のように…… まるでその下を何かが…… 例えば、龍が走るかのような そんな錯覚 自分のお気に入りの光景 風が織り成す緑の波 馬達が見えなくなっても、しばし眺めていました |
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小高川沿いを野馬追い込みの一団が進む 初めはゆっくり、静かに進む 追われる役の裸馬もまだノンビリとした雰囲気 ちょっと早足で前に進み出る裸馬 「行ったど、行ったど」 後ろのサムライが前のサムライに声をかけた 境内に続く坂の手前は曲がりくねっている 裸馬に逃げられないように周りを囲む そして坂の手前 ここからが本番だ |
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| 小高神社の境内につながる坂道の入り口 最後の曲り角を左に曲がる よしっ! 行け行け行けぇーっ! 先ほどまで静かに馬を囲っていたサムライ達が 一斉に大声を上げて裸馬の尻を鞭で叩く 大声と叩かれた痛みから走り出す裸馬 おらっ!前に出せ、前にっ! うらぁっ!逃げられるなよっ! 若い侍が威勢の良い声で裸馬を追い立てた |
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神社境内ではいよいよ野馬懸が始まる 御神水に浸した 「駒とり竿」 で印をつけられた裸馬に 御小人達が総がかりで挑み、素手で捕らえるのだ 野馬懸の代表的な光景 待ちわびた観覧客達は逃げ回る馬の姿や 勇敢に馬に挑む御小人の姿に 歓声と拍手を送った やがて一頭の裸馬が捕まり縄をかけられる 最初に捕らえた馬は神馬として奉納されるのです |
| たてがみに御幣を付け、塩と米を供える 素晴らしい馬に神主も満面の笑顔だ 「まことに立派な馬です」 そう言って御小人達を称えました どこの神社にもある絵馬 野馬懸は絵馬の原型と言われています 絵馬には願い事を託すもの 今なお「原型」で託す相馬の人々の願いとは どんなことなのでしょうか…… |
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神馬を奉納した後も野馬懸は続きます 御小人は残りの馬を捕らえるため再び対峙します 暴れる馬に何度も振り落とされる御小人 元気な馬の姿に喜ぶ観客 不甲斐ない御小人に苦笑する軍者 倒れる御小人を気遣い心配する女性 馬が暴れるたび、御小人が振り回されるたび 様々な声があちこちから上がった やがて逃げ疲れたのか全ての馬が捕らえられた |
| 野馬懸で捕らえられた馬は 最初の一頭は神馬として奉納される その次に良い馬は殿様に献上されました 残りは兵馬あるいは農耕馬として競売されるのです 競売……いわゆるセリも再現されます セリには副軍師や侍大将が参加する ゼニ持ってるでしょ。頼みますよっ! 軍師命である!一頭競り落としてこい! 笑いながら、どこか本気さも感じる面持ちで 役付武者たちは競りを始めた |
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40万! よし45だ! 45万です。他ありますか? 50万! 50万出ました!50万です! 役付武者達は楽しそうに額を競り上げていく どこまでが本気で、どこまでが演出なのか 55万っ! 55万落札です!小高郷佐藤副軍師! お買い上げありがとうございました! 馬を引き取りご満悦の副軍師 「 かあちゃんに怒られちまうな 」 ……演出ですよね? |
| 野馬懸が終った 役付武者達は再び社で終りの儀式を行う 境内の西側の広場では小高郷のサムライ達による 神旗争奪戦が始まろうとしていた 軍者がサムライ達に説明を始める これから神旗争奪戦が始まります。 5本目までは取った者が審判席に上るように。 試し打ちは1発です。 少年騎馬もいるので気をつけて行うこと。 あとは元気良くやるっ! 以上です。 |
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神旗争奪戦開始の螺が吹き鳴らされる 花火の打ち上げを待つ騎馬武者達 ドンっ! 花火の音に驚き馬が暴れだす パーンッ!パチパチパチっ! そんな馬をしっかりと操りながらも 視線は天空の御神旗に向けられていた |
| 最初の御神旗を見事に取ったサムライ 競馬大会でも活躍する佐藤氏でしょうか しかしその手に握られていたのは白いタオル なんじゃこりゃ? と驚く 佐藤氏 そういえば試し打ちがあると言ってましたね 周りの人達も大笑い 佐藤氏は苦笑しながらタオルを投げ捨てました |
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花火が上がり天を見上げる騎馬武者達 落ちてくる場所を見極め馬を操る 舞い降りる小高神社の黄色い御神旗 旗の下に群がる騎馬武者 旗を取ろうと鞭を上げ、腕を伸ばす 旗を目指すサムライ達の真剣な表情 見事に旗を取ったサムライは 意気揚々と審判席に馬を走らせた |
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| 御神旗は鞭に絡めて取るのが常道 あるサムライ (写真 上) が手で取ってしまいます しかし勢い余って落馬 (写真 右上) 旗も誰かに奪われてしまいました 旗を奪ったサムライも下馬しています 追え追えーっ! そのサムライも他の騎馬に追い回される 追う方も追われる方も楽しそう 観覧客からも大きな笑いが上がります こんな光景も小高郷の神旗争奪戦ならでは |
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神旗を取ったサムライが我が子を乗せて審判席へ これも小高郷の「祭」の光景 広場から聞こえるサムライ達の楽しげな喧騒と 見に来ている人達の笑い声 24日の神旗争奪戦のような荘厳さとは違う 穏やかな雰囲気 元気良くやる! という言葉通りの、楽しむための神旗争奪戦 観覧客への見世物ではなく 祭を楽しむ人々の姿がそこにあった |
| 螺が相馬野馬追の終幕を告げる 伝統を守りつつ、祭として楽しむ 初夏というには暑すぎる日差しの下 緑の中を駆け抜けていく風が何かを語っていく 今なお残る日本の原風景の中 受け継がれし伝統と祭の光景 相馬野馬追の本質は小高にあった |
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| 雑記 〜 相馬野馬追と各郷 〜 ※戯れ言です。長いので読み飛ばしてください。(^^; 相馬野馬追の本質は小高にある。と書くと他の郷から文句を言われそうですが。(^^; 野馬追を何年も見てきて、いろいろな人の話を聞いているうちに 自分の中の「相馬野馬追 観」というものができてきました。 相馬野馬追とはそもそも昔の軍事訓練なのですが、つまりは「戦」に赴く様々なものを表している祭だと思うのです。 24日前編で伝えた大原騎馬隊。 町から離れた集落の男達が戦に赴くため勇ましく立ち上がる光景。 この光景は各郷各地で見られます。昨年の持舘副軍師出陣もその一つ。 まだ見たことはありませんが原ノ町駅前や、小高でも同じような演出(?)が行われているのでしょう。 雲雀ヶ原に向けて進軍する騎馬武者達。 24日のお行列は町の人達に見守られながら進軍する光景です。 原ノ町のお行列はまさに圧巻ですが、ココで伝えたように小高でも野馬懸前にお行列を行っています。 そして雲雀ヶ原での合戦。 甲冑競馬・神旗争奪戦とも迫力のあるものですが歴史的には野馬懸の形が正しいのでしょう。 その野馬懸を行う小高郷。 神旗争奪戦も浅いとは言え歴史あるもの。 それゆえか小高でも祭を楽しむものとして執り行われているのではないか。 24日の夕方には戦場地から無事に戻ったことを町の人に伝える上り馬行列が行われ 出陣した村人達を出迎える火の祭も小高で行われている。 出陣(お行列) → 合戦(野馬懸) → 上り馬行列 → 出迎え(火の祭) と、完全に一貫して行われる小高郷は相馬野馬追・本来の姿と言っても過言ではないと思うのです。 伝統は祭として受け継がれ、25日の野馬懸となっている。 こうして書くと 「 じゃあ他の郷はいらないのか?」 と言われそうですがそうではありません。(^^; 確かに小高の野馬懸は伝統的な祭です。 しかしそれだけでは 「一地区に伝えられる村祭」 になり、規模の縮小や衰退の可能性も出てくる。 相馬野馬追を支えているのは、もう一つの深さである歴史の継続。 それを担っているのが総大将擁する宇多郷・北郷。つまり相馬中村神社です。 旧相馬藩の歴史を紡いできたのは中村神社、宇多郷です。 彼らの存在が相馬野馬追を大きな軍団、つまり「国」を形成するのです。 だからこそ23日の総大将出陣には野馬懸なみの大きな意味がある。 しかし殿様の行列や伝統の祭では華やかさが無い。 相馬野馬追に華やかさを加えるものが甲冑競馬であり神旗争奪戦なのです。 そしてそれを行う雲雀ヶ原を擁する中ノ郷・太田神社は野馬追の中でも最多の騎馬武者を出している。 甲冑競馬・神旗争奪戦という花形・魅力があるためか中ノ郷から出陣する騎馬は多い。 その騎馬の多さこそ中ノ郷の誇りであり、相馬野馬追を支える元の一つなのです。 歴史を紡ぐ相馬、伝統を継ぐ小高、文化を繋ぐ原町。 紡ぐ 、 継ぐ 、 繋ぐ 一見、似たような言葉でも本質は異なります。 三位一体、それぞれがそれぞれの持ち味を出し、かつ 「 我こそが一番 」 という誇りを持っているからこそ 相馬野馬追は長く受け継がれ、深みのある祭になっている。 自分はそう考えています。 ……言いたいこと、伝わったでしょうか?(^^; まぁようするに、相馬野馬追は各郷にそれぞれの持ち味があり、それを誇りに対立しているから面白い。 と言うことなのです。 どれか一つだけが凄くなっても意味が無いし、欠けてもいけない。 それが自分の中の「相馬野馬追 観」の一つです。 これ以外にも野馬追の魅力はありますが、それはまた別の時に。(^^; | |