観覧車と細い月

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by.石礫


遊園地にお出かけしましょう
楽しい一時
ちゃんとした恋人同士に見えるよね


一日一杯遊んだ。
空を見上げると細い月が浮んでいた。

「ねー高木君、あれのろうよ」
と、佐藤が指差した先には観覧車
一瞬、高木は戸惑った
「…あの…」
「いいから、行こうよ」

切符を切ってもらい、係員が扉を閉める。
そして、あがっていくゴンドラ
「ほら、建物が小さくなっていく」
「…あの…佐藤さん…平気なんですか?」
「なにが?」
外を見ながら、高木のほうを見ずに答えた
高木は黙ってしまう。
「何よ、言いたい事言ってくれ無いと、なんか気持ち悪いなぁ」

高木はやっと切り出した。
「…松田さん…観覧車に仕掛けられた爆弾解体の時に…って聞きましたから…どうなのかなって」
「…そうね…。観覧車だもんね…。実を言うと、私、観覧車に乗るの…怖かったよ

だから…高木君と一緒に乗ったら、もう、観覧車に乗るの怖くなく、なれたの」
「え…」

そこにあなたがいるから…

「あ、もう、一番上に来ちゃうね」
高木は、そっと、佐藤の頬に触れて抱き寄せる


決まり事の様に
ゴンドラが一番上に来たら
キスをしましょう


空に浮ぶ…あの銀の月だけに見られるのなら構わない

FIN