DREAM(Bitter&Sweet)

一つ前に戻る

by.石礫


「いかないで松田君!!」

悲しい夢を見る…

あの人をいつも掴もうとするけれど…いつもあの人には決して届かなくて
掴もうとする手はいつも空を切る
そして、あの人をいつも失う

その夢で私はいつも、あの人の存在が世界から消えてしまったのだと思い出す

悲しい涙はいくつ流したのでしょう?

「いかないで」

その言葉は、あの人の夢を思い出す…あなたの姿にあの人の姿が重なって…

「お願い、高木君…行かないで!!」

でも、あなたも…その言葉を拒んでしまう

誰も失いたくないから…大切な人を作らない…そう思ってた

でも、あなたは私のその考えさえ変えてしまうほどに、大きな存在で
…一番大切な人になっていた

私の大切な人の死を望む死神の手から、あなただけは絶対に守りたい…それが私の気持ちだった

悲しい夢を見る…私は確実にあの人に手を伸ばす…そして、掴もうとする手はやっぱり空を切る

ふとあの人は初めて振りかえり…私に、言い聞かせる様に言う
「今のあんたを支えているのはオレじゃない」

「え?」

あなたの姿がそこにあって
「佐藤さん。」
あなたの笑顔がそこにある…

どこか思い出の中に生きていた私を救ったのは、あなたのその笑顔
私は何度その笑顔に救われていたのでしょう…

忘れたいの…忘れたかったの…忘れなきゃいけないと思っていたの
「忘れるこたぁはねーよ…」
その度にあの人の言葉が胸に突き刺さる
「ダメですよ忘れちゃ…」
そして、あなたは同じ言葉を私にくれる

あなたは…あの人とはまるで正反対だと思っていたの…でも、あなたの本質はどこかあの人に似ていた…
私はずっと…あなたに初めて出会った時からずっと惹かれていたの…あなたの笑顔と優しさに何度も救ってもらっていたの…。

手を伸ばした世界の先には、あなたの存在が在る。

悲しい涙はもう流さない…あなたが私の涙を受け止めてくれたのだから
私を救ってくれたのだから

あの人への悲しみの傷は…あなたの言葉で癒えていた

悲しい夢は、もう見ない……

悲しいだけの夢は、もう見ない…

 

後書き:美和子さんの松田君への想いと高木君への想いというものですね