最後の鍵 title29-list

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今回は別設定での、ヒカル20歳設定オガヒカです。

by、石礫

「んー、佐為…?」

横に人の気配を感じて目が覚めた。
「あれ?……緒方先生?」
目の前にある顔は佐為じゃなくて、緒方先生の寝顔だった。

緒方先生…寝顔、以外と可愛い……ん?なんで、ここに居んだ?…体のだるさと戦いながら、なんとか起き上がって、
ベットの周りに、自分のスーツが、散乱していたので、思わず、自分の姿を確認した………パンツもはいてない…
「!!!????」
原因を考えようとすると二日酔いで頭がガンガンして、へたり込んだ
「えっと、昨日は、緒方先生に飲みに連れてかれて……………うーん…」

二日酔いでガンガンしている頭で、頑張って昨日の事を整理してみて、オレは青くなった

「…う、嘘だろぉ!?……………って言うか…よりによって…緒方先生とっ?」

 −−−

進藤ヒカルは囲碁棋士で、タイトル戦に挑戦中の20歳の青年(と言うには、相変わらず少年っぽいが)
今、ヒカルが挑んで居るタイトル戦は、現在、四冠である緒方の持つタイトルで、戦いは始まったばかり…
…補足すると、塔矢アキラは八大タイトルの1つを既に手中にしており、本因坊は相変わらず桑原で、倉田がニ冠である。


「くっ……ありません」
緒方が悔しそうに負けを認め、ヒカルは中押し勝ちを決める事が出来た
「よっしゃ!!」

そして、棋譜の検討をし終わると…今日はこのホテルで泊まりだ。

ヒカルは疲れたので部屋でくつろごうと思っていたのだが、
「…お前、たしか、20になってたよな…。よし、飲みに連れてってやるぞ!」
「ちょ、オレ、先生の自棄酒に付き合う義理なんて…」
そうやって捕まると、その人さらい(奇しくも、某中佐は同じ声だ)に、飲みに連れて行かれたのである

バーに連れかれて、ヒカルは勧められるままに飲むのだが、2、3杯飲んだあたりで潰れた
「ちょっと、早過ぎだろ!…………そんなに弱くて、どーすんだっ?」
ヒカルはすっかり眠ってしまい、緒方も、さすがにあきれてしまう

バーも終わる時刻だ。
揺すっても全く起きる気配がしないので、ヒカルに肩を貸して、緒方は部屋の前まで連れてくる
「進藤、鍵は?……」
ヒカルに返事はない、緒方は仕方なくヒカルのポケットを探ってみる、そして、カードキーを見つけると、それでドアを開けた
ベットにヒカルを寝かせる
「…水…」
ヒカルのその言葉を聞いて、酒を飲ませた責任を感じたか、緒方は水の入ったコップもって来た
…酒のせいもあるのか、逆光のせいでシルエットだけしか見えないヒカルには、それが誰かわからなくなった…

昔消えた、碁打ちの幽霊の気がした
「佐為…」
と呟いてから、それが緒方だと思い出した

「あ、緒方先生…か」
「…水、ここに置いとくぞ。…明日が怖いぞぉ、二日…酔……い……」

ヒカルが呟いた「サイ」と言う言葉…。随分、前に「サイ」と言う名前をどこかで聞いた気がしたのだが、
酒のせいかすぐに思い出せない。
そして、やっと、すっかり忘れかけていた、幻のネット最強棋士「sai」の事だと気が付いた

水を飲もうと、ダルそうにサイドデーブルに手を伸ばしかけたヒカルの肩を掴むと

「進藤!お前、やっぱり、saiの事知ってたんだな!答えろ!saiは今どこにっ!!」

緒方はゆさゆさとヒカルの肩を揺らす。

肩が揺れると頭も比例して揺れるので、ヒカルは酔いで気持ち悪くなってくる
しかも、緒方のほうも酒がはいってるせいか…力加減が出来ないで、思いっきり揺さぶるのである
ヒカルはブンブン揺らされる度に更に気持ち悪くなってくる…さすがに限界になって、ついに、音を上げた。

「は、話す!話すから揺らさないで〜〜吐く〜っ」



ヒカルはマグネット碁盤に、ある棋譜を作り、緒方に見せた
「これ、覚えてる?…酔っぱらっていた緒方先生がオレと打った碁。」
棋譜を見せられ、印象だけの物をはっきりと思い出した。その時「saiの様だった」と言う印象を受けた事も思い出した

「これは、佐為が打ったんだ。」
「…それ、どう言う意味だ?」


「あのね…話せば長くなるけど……佐為は、平安時代の碁打ちで………

佐為の事とかを話しながら、『初めてだな、佐為の事、人に話すの』と、ヒカルは思っていた。

………って事で、佐為が最後の打ちきったのは、緒方先生なんだ。」


佐為の事を聞かされた緒方は固まって居る様な顔をしていた
「(…ほらね)」ヒカルは落胆して溜息をついた


「バッカみたいっ!酔っ払いの、言葉、真に受けんなよ!」

「…信じてやるよ、その碁打ちの幽霊の事」


ヒカルの落胆の表情を見た緒方は、逆に確信したのだ、荒唐無稽な真実を…信じられると…


「え?今なんて…」

「信じる…と、言ったんだ」

緒方に、もう一度「信じる」と言われてヒカルは何も言えなくなった、


優しく頭を撫でられた

「苦しかったのに…たった一人で抱えてたんだな。」

その言葉は、佐為への気持ちが閉じ込められた心の扉の最後の鍵だった

気が付いたら、ヒカルは緒方の前だと言うのに泣いてしまっていた
「…だって、…誰にも…言え…なかった…から…」
佐為を思い出して泣きじゃくるヒカルを緒方は、黙って慰める様に抱きしめた


二人は何も言わないままに見詰め合う。そのままで、触れ合う互いの唇。
それから、二人はゆっくりと目を閉じ、そして、口付けは自然に深くなっていく…。

マグネット碁盤の棋譜がヒカルの目に止まる
「ダメ……棋譜が…佐為にみられてる気がする」
ヒカルの言葉に抵抗する意志も無く、それは、ただの良い訳ではあるが
「見せつければいい…」
「…でも…」
それでも、少しの戸惑いを見せるヒカル…。緒方はマグネット碁盤に手を伸ばし、それをひっくり返した
「こうすれば、佐為には見えないだろ?」
「くすっ…そうだね」
柔らかく微笑むと、ヒカルは緒方に身を任せた。すでに、互いの肌を合わせるのはその時の全てになっていた

そして…



 −−−

そして、行き着くトコまで…されちゃったんだ…

……うわぁ…成り行きとはいえ……やっぱ、そ、その場の雰囲気がまずかったんだ……
と思いながら、シーツの端を握り締め、うなだれてると、緒方先生も起きた

やっぱ、覚えてるのかなと恐る恐るみると、緒方先生は、にやりと…これは、なんとなく、悪人の笑みだった

いきなり引き寄せられて、キスされた……なんか、すげー上手い…っていうか、他知らないから、例え様無いけど
息も付けない程で…やっと、解放されて、息を大きく吸いこんだ。まだ、心臓がバクバクいってる気がする
オレは緒方先生を恨みがましく睨むけど、なんか、通じて無い気がする……なんか、すげ−嬉しそうだし

「Give-and-take…だ。昨日ので、騙して佐為と打たせた事、帳消しにしてやるよ。」
「え゛っ?」

「さて、取り引きしようじゃないか、進藤。 」
「取り引き?」

「佐為の事は黙っておいてやるから、今後も、昨日の様に楽しませてもらおうか……なっ。」

つまり、それは、今後とも、「ヤりたい」って事?

「…うっ、嘘〜ぉ!!」


FIN

後書き:この設定でのオガヒカは、秘密を共有する関係。…こんな事言うけど、何があっても絶対に黙っててくれる人にしたいですね
緒方がヒカルにかけた言葉が「最後の鍵」って意味にしてみました。今まで以上にかなり強引なパターンですけどね(滝汗)
この話の教訓(笑)は「酒は飲んでも、飲まれるな」です。