そこは真っ暗

オレだけにスポットライトが当たってて…その光の中で小さなオレは泣いてる
「だって、きょうはおそといったらダメだってば………」…今日は?なんの日だったってばよ

そしたら、突然、ビュウッと風の音がして。気が付いたら…ここって、慰霊碑の前だった

「ここなら、誰も居ないから大丈夫でしょ」
昔から知ってる気がする、誰かの声。…その声の主の顔は逆光でよく見えない…優しく笑ってるってわかるのに、顔だけが見えないってばよ?

「………この…に…う…れて……くれて……りがとね」

葉のざわめく音に遮られて、その人の声はよく聞こえなかった…けど、なんか嬉しい。
オレは、その人の事、絶対に大好きって、わかってるのに…どうしてか、思い出せないんだってば……

ねぇ、アナタは誰?


そして、…何所か遠くで弔いの鐘の音が聞こえる…




覚えていない夢から目が覚めるナルト…早朝だった

「ふわぁ〜」大きなあくびをしてから、ナルトが自分の横を見ると
珍しく、ナルトの起きた気配も感じて無いのか、カカシは眠っていた。ナルトは、カカシの眠ってる姿になんとも言えない顔をした

「………あ、そーだ!この時間なら、きっと会う人もいないってばよ!!」


「ちょっとだけ、…散歩してくるってばよ」小さく声をかけつつ。音も立てないように戸を閉めた


Do Ninjyas Dream of Golden Fox?

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by,石礫


仲間達を薙ぎ払い、金色の狐は、目の前で悠然と嘲笑を浮べる

オレは、別に死ぬ事なんて恐れちゃいなかった

生きる事は絶望でしかなく…生きて行く価値すらなかったオレは、むしろ、このまま、狐によって殺されるのも良いと願ったのに…
そんなオレを歯牙にすらかけず…里の方向に狐は疾走していった

…死なせて貰えなかった……オレには死ぬ価値すらも無いのかと嘆いた

そして、恐れていなかった筈なのに、あの存在が立ち去った後からあの存在に震えてた

紅い眼に…自ら死を選ぶ事すらも赦されず…狐に殺される事すら見放され絶望という闇の中にいたオレは、その日、たった一つの光明に出会った
それこそ…オレにとっては奇蹟。そのものだったんだ…だから、その光を本当に抱きしめたかったんだ

ずっと…




ナルトが出かけてから程なくして目が覚めたカカシは、ベットの中で身じろぐ、横にいる筈の温もりは無く
「……ナルト?……修行、行ったのか?」
彼の恋人は…既に部屋に居なかった。ナルトが起きた事も気が付かないほど爆睡してたのかと頭を掻く
「…今日ぐらい、行く事ないのに………ちぇ、も少し、激しくしとけば良かったかなー」と言いつつベットから這い出す。

カカシはいつもの忍服を着込むと軽く準備運動をするように伸びをした
「さーてと、ナルトの所いきますかっ」



10月10日。継続していたり、緊急では無い限り、里全体で、任務を原則的に受けない休日。九尾の狐の犠牲になった者達の慰霊祭


この日は里全体がピリピリしていて、ナルトにとっては一人になりたい休日……


ナルトは、自分にまつわる真実を知ったからこそ、この早朝、慰霊碑の前に来た。不思議とここは静寂だった
「今は、こんな事しか出来ないけど」
手に野で積んだ花を持っていた。慰霊碑にその花を捧げ、九尾の犠牲になった者達に祈りを捧げる
「オレなんかに、祈ってなんて欲しく無いのかもしんないけど…」
ナルトはそう、呟いて…突然…どうしてか、泣きそうになってきた…

「こーんな所でなーにやってんのかな?ナルトっ」
「え?」
知っている声がすぐ傍で聞こえて、振り向くと、にっこりと笑うカカシがいたので、ナルトは、思いっきり驚いた

「カ、カカシ先生!?…慰霊祭に出るんじゃないの?なんでいんの?」
怪訝そうな顔をしながら、疑問を投げかけるナルトの言葉に、カカシは不思議そうな表情を浮べ

「出るなんて、一言も言って無いけど?」と首を傾げた

そう言われて見れば、そう言えばそうだったと、ナルトは思い返す

彼の口からは慰霊祭に行くと言う言葉は、一度も聞いていなかったが
里で決まっている行事なので、上忍のカカシが出ない筈が無いとナルトは思いこんでいた


「オレってさー。あれ、出た事無いんだよね。一度も」
「えー?そーなの?」
「そーなの。」

…四代目は……先生は、あんなの出るより、ナルトの傍にいたほうが喜びそうだしさ…と、カカシは心の中で呟いた

「絶対、外したくない大事な任務があったから…ってのが、ま、一番の理由だけど。あ、今年は入ってないけどね」

「だ、大事な任務?…どんな任務?ものすげーの?」
「それは、ひみつ。」


慰霊碑の前には色取り取りの野の花が置かれてる
「花つんで来たの?」
「うん。そこら辺で、摘ませてもらったんだってばよ」
ナルトが花を摘んでる姿を想像してみて、可愛いかもしれないと、カカシがにへらと笑ったのはナルトは気付いていないのである。

「種蒔いてさ、ここ、花いっぱいにしたら…英雄達ってば、喜ばなねーのかな?」
「んー。それも、良いかもしんないねv」


「でさ、コンビニで、買出ししてきたから、ここで朝食にしない?」
カカシに、コンビニの袋を見せられ、ナルトは自分が朝食を食べていない事に気が付いた…そう言われてみれば、お腹が空いていた

「うん!食べよ!」
その返事にカカシは口布の下でにやりと笑うと
「ここなら、誰も居ないから、遠慮無くイチャパラできるでしょ」などと言いだして、ナルトは、思わずひいてしまう…のであった。

食事を済ませる。…まだ、カカシはコンビニ袋をごそごそ
「そして!デザートに…はい、これ。」
「ケ、ケーキ?」
フルーツがふんだんに乗せられた、なんともおいしそうなケーキがそこにあった

「誕生日おめでとうナルト。」
「あ」

九尾の襲撃の日…それは、即ち、ナルトの誕生日でもある。…でも、ナルトは祝って貰えるなんて、思ってもなかったので、ひどく驚いた。

「…ナルト、この世に生まれてきてくれてありがとね」

ナルトは、カカシのその言葉を聞いて、突然、胸に懐かしさが去来した
「(あ、まただ)」

「ん?どした?」
「…なんで……いつも、カカシ先生の言葉って、嬉しいのに…なんでか、懐かしいの?」
「……っ」
カカシはナルトの言葉に瞬間的に、動揺してしまった

「もしかして、オレ…オレってば、ずぅーと、ずぅーと前に、カカシ先生と会った事あるの?」
「…………………ナルト……お前…」

幼い日の事を思い出したのかと、カカシは思った、…だが、決して、ナルトは、幼い頃カカシと過ごした事を思い出した訳では無い
カカシは、ナルトが忘れてしまっている過去の事を、言ってしまおうかと迷ったが、自然に思い出せる様になるまで言うべきじゃないと思いなおす

「それはさぁ…やっぱ、ナルトとオレは…運命の相手だから?」
と、冗談っぽく返した
「もー!カカシ先生、ぜってーぇ人の話聞いてないっ!」

無理に思い出させて、ナルトの幼い頃の心の傷を再び抉るような真似を、避けたかったのだ……思い出せ無いと言う事は…まだ、その傷に心が耐えられないのだから

「それより、ほら、ケーキ食えって」
話題を切り替え、ナルトの為に買ってきたケーキを食べる様に勧める
「あ。そーだった」

「…でも、オレ、誰にも誕生日の事は言ってなかったのに…」
「恋人の誕生日ぐらい祝うのは、当然でしょ?」
カカシの言葉に、ナルトはとても申し訳無さそうに笑い、ぽつりと、自分の心情を漏らした
「……オレさー。ずっと…この日はめでたくないと思ってたってばよ。……だから、先生におめでとうって言われて、すげーびっくりした」
優しい瞳をしカカシは黙って、その言葉を聞いていた

「だから、カカシ先生…ありがとだってばよ……ホント、すげー嬉しい……」

嬉しさで涙ぐむナルトにカカシは優しく微笑み、ナルトのその唇に口付け……たが、カカシは何かに気付き、その眉間に皺を寄せる
「…ったく、邪魔するなんて野暮だね…なんの用?」

ナルトとのキスを切り上げ、カカシは振り向かずに視線だけで背後を睨み付けた

「アンタに用は無いわよ。用があるのは、ナルトのほうによっ」と、あきれた様に言う紅がそこに居た

それに、サクラ達下忍。下忍担当の上忍。中忍試験を担当した中忍や、特別上忍達やらも居た

「おまえ等、慰霊祭に出てたんじゃ?」お楽しみを邪魔されたカカシは、かなり、そっけない口調で、その場に居るメンバーに尋ねる
「少しぐらい抜けても大丈夫だから抜けてきた」と、全員が口を揃えて言うのだ

こんな日に自分に用なんて…と、不安そうな顔でナルトはカカシの方を見る。カカシのほうは頼られる事に気を良くしているのだが…
「大丈夫…心配する事は無いから」とナルトにだけ聞こえる様に囁いておく

カカシの言葉もある事だし、ナルトは意を決し、ほんの少し警戒しつつも、用事を聞く事にした
「えっと、オレになんの用だってばよ?」


「ナルト誕生日おめでとう!」

全員が様様なプレゼントを携えていて、ナルトにそれを手渡してくれる。呆然とプレゼントを抱え、ただ、ただ、驚きで固まってしまうナルト…。
「ほら、お礼、言わなきゃ。」とカカシに促されて。やっと、自分の誕生日を皆に祝ってもらっているんだと気が付く始末である。

「み、みんな。ありがとうだってばよ」

ナルトはお礼を言いながら、余りの嬉しさに、涙をポロポロ零しながらの泣き笑い。礼を言われた人達は、小さくガッツポーズを同様にしていた
一方、カカシのほうは、お礼を言われてる人達に対して、ケッと言う感じで悪態を付いてるのであるが…

「………はいはい、テメーら、用が済んだんなら、今すぐ、散れ、散れ。人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られちゃうよ!」
にっこり笑いながら、最大限の殺気を込め、全員に脅しをかけるカカシであった

「馬?そんなのどこに居るんだってば?」そして、ナルトはあくまでも天然だった。


FIN

後書き:同棲?の既成事実はさらっと(笑)カカシは大人げなく嫉妬深い(爆) 題名の元ネタは某SF映画の原作タイトル(04.10.8)

一応、裏設定として:話の中でカカシの言っていた、その日の外せない任務。とは…ナルトの護衛(こういう日だから危ないと言う事で…)
それから、イルカ先生は来てません慰霊祭に出てます。両親を亡くした日と言う意味合いが強いので、この日ばかりは、ナルトも気を使ってます