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by.石礫


その月が来る、
友をなくした日が近づく、その時期になると情緒不安定になり、何かを考える事が億劫だった。

何も考えないで

それを掻っ切り、撒き散らせ、生温かい血を浴びる事に倒錯的な興奮を覚えた
鉄味を帯びたその匂いが、情緒不安定な時期の安定剤だった

情緒不安定から解放されるのは、9月も過ぎて、そーいや誕生日過ぎてたんだと気が付く頃

10年以上も、その時は何も考えず敵を殲滅できるだけの任務を受けつづけた
それが、ほぼ毎年のオレの誕生日だった。

そうそう、せいぜい、違ったのは18の誕生日ぐらい…か?



その日、俺は任務の報告を終え、
上忍の待機所 人生色々で本を読んでると、脈絡もなく、「おい、今日って、お前の誕生日か?」とアスマに声を掛けられた
「ああ。今日から18だから、堂々とイチャパラ読めるんだよなー」
「つーか…待機所で、堂々と読むってのも、どーだかなー」

「で?……なんで……」

オレは、ある一点を指差し、思わずアスマを睨む
「…ったくメンドクセーな…ほらよ。お前に言いたい事があるらしい」アスマに抱えられてたナルトが手渡された…

「かぁし、たんじょーびおめでと!」
満面の笑みで首に抱き付いて来て、祝いの言葉を言うナルトに嬉しいと素直に思ったけど

「ありがとー。でも、オレの誕生日って誰から聞いたの?」

「ほかげのじーちゃ」
「そ」


任務だと、人生色々から出ていこうとするアスマに声をかけた
「おい」「なんだ?」

「言っとくが、手ェ出すなよ。」
そして、たぶん、思いっきり睨み付けたと思う。
「………ガキに手ェ出すかよ。それに、お前のに、手ェ出すほど命知らずじゃねー」

「じゃーね。ばいばーいクマ!」
とナルトはアスマに可愛く手を振ったりする…ったく、アスマにまで、そんな可愛さ振りまくんじゃないのっ

「じゃ、ナルト帰ろ!途中でケーキ買おうねv」
「うん!」

で、家に帰ってオレの絵ってのをもらった……でも、何描いてるのか全くわかんなかった…けど

「かぁしにいっぱいいっぱい!ありがとしたいの」
「どーして?」
「かぁしがなるとのそばいるから!」
オレは思わず、少し溜息をついた
「あのなぁ…ナルト。」
「?」
「…ありがとう!って……こっちが言いたいぐらいなの!」
「そーなの?」
「そーなの!」
ナルトと一緒にいれる事に、むしろ、オレのほうが感謝してたんだ
「だから……気持ちだけで……あ、そーだ。」気持ちだけで嬉しいと思ってたが、ちょっと良い事を思いついた

「ん。なに?なに?」

「ナルトが大きくなったら、オレのおヨメさんになってよ!」

「おーきくなったら?」
「そ、大きくならないとおヨメさんになれないから、約束なんだけど」
「うん!おーきくなったら、なるとはかぁしのおヨメさんになるってばよ!!」
本当に嬉しそうに笑ってた。だから、男はヨメになれないとは、言う気にもなれなかったけど

「ね。だから、約束のちゅーをちょーだいv」
「うん」

で、ナルトからのキスをもらう。ほんの少しのイタズラ心が沸き起こり、するりと子供相手に大人のキスを少しだけ仕掛けた

「もー!かぁし!!」潤んだ瞳で、ナルトに怒られても可愛いだけだったけどね

「もっと、大人になったらね…オレの本当に欲しいのを頂戴ね」
「うん!」

あの時の表情を思い出すと笑いが耐えない



「……おヨメさんかー。」

ナルトは、忘れてるから…今は思い出してはもらえない、オレだけの思い出だけど

ナルトのそばに居れない間のオレの誕生日の、なんて味気ない事か
ずっと、欲しかったのに手が届かなかった距離が、どんなに辛かったか…その間の情緒不安定には拍車をかけて


一度は失いながら…また、手に入れられた一緒に居られる幸運。…これは邪魔されたくない時間



ナルトの気配とパタパタと可愛い足音がする。…風呂上がってきたみたいだな。


湯気でほかほかしてるナルトが、部屋のカレンダーを見ている

「そーいえばさ、カカシ先生…9月に誕生日って聞いたけど…いつなの?」
「15日。」
「え?」
「9月15日の乙女座ね」
「…って、今日じゃん!!」
「だねー」

そう、今日は9月15日。

「うわー!プレゼントなんて用意してないってばよ!」
どうしようと悩むナルトが可愛いなんて、思ってる事、自体、腐ってるよな?

「……それにしても、乙女座…乙女って、なんか先生に似合わないってばよ」
「失礼な!センセイ、こんな乙女の様に繊細なのに〜」
「ヘ?どこが?」


「プレゼントやっぱ、いるよね!」
「いらない」と、オレは即答

ほとほと困り果てたナルトの頬を両手で包みこっちに向かせて、
その蒼い瞳をしばらく見つめると、オレは、あの時と同じに大人のキスを仕掛ける

「オレが欲しいのは…もう、ここにあるから…プレゼントなんていらないよ」
「………へ?」
瞳に涙を貯めて要る姿はあの時よりも、もっと、オレの欲情を煽るんだ…そんな瞳で見つめられると、ホント、たまんないよ


「ね。だから、もっと頂戴……ナルトを…」


そして、

幼い頃は全てには触れられなかった…そんな君と躰を繋ぐ事はどんなに素晴らしく甘美な事か…


FIN

後書き:長編で親友を亡くしたのは九尾事件の前にしてたので…いっそ、誕生日頃にしてしまえ!と言う事で、でも…展開上いらなかった様な気も
で、ここでは、18までは一緒という設定にしようと……つーか、ちっこいナルトにも全開で手ェ出してるよーな気が…(苦笑)04.9.14