Snow falling on The sea

一つ前に戻る
「波の国」話も、少し触れてみたかったので

by.石礫


ひとひら、季節外れの雪は海に降る
雪はあいつの心の様に…真っ白で……


波の国。

依頼者に騙された形でのDランク任務。実際、蓋を開けたらAランク任務。
ただ7班の下忍達には、大変危険な任務だったが、良い経験になっていた。

苦しい戦いは終わり、戦いで傷ついたサスケの看病に、サクラは忙しく、カカシもチャクラの使い過ぎのせいか余り動けない
一人元気なナルトは、イナリと、職人達の仕事を手伝ったりして、昼間は忙しくしていた

ただ、夜、一人になると、サスケに庇われた事や、再不斬と白の最期をふと思い出すのだ。


タズナの家の縁側で、忍服や額当てをしてないナルトが一人、黄昏ていた。

「どうしたナルト?」
振り向くと、ナルトと同じく、木の葉のベストや額当てを着用していないラフな格好のカカシが傍らにいた。そして、ナルトの横に腰掛ける
「あ、オレ、サスケの看病、手伝って」
「あそこは、サクラに任せて、ま、座ってろ。それとも、先生の隣は嫌?」
「…い、嫌なんかじゃないってばよ。…うん…じゃ、遠慮なく」と言いながら、ナルトは、微妙に距離をあけ座りなおす。
ナルトの無意識の警戒心に、一瞬、カカシは複雑な表情をした

「…あの…白って子の事、考えてたの?」
「…うん。」

「…白とは、森で会ったんだ…薬草を摘むの手伝った…」
俯いたまま顔を上げないナルトの肩をカカシは軽く引き寄せる。
「ちょ…」
思わず、ナルトは抵抗するが、
「いいから、話の続き、聞かせて…」にっこり笑うカカシに何故か逆らえないので、そのままにして、続きをポツポツと話す

「あいつとオレ…どっか、似てたんだってば…………たった一人で、やっと認めてくれたのが眉無しで…だから、眉無しはアイツの大切な人で」
「そっか」

「ねえ、先生。…オ、オレも、白みてー強かったら…イルカ先生が眉ナシみてーだったら…もしかして、あんな風になったのかな…」

「ありえないな」

「え?」即答だったので、思わず、カカシの顔を見上げる

「ナルトは、再不斬の様に、国を支配しようと言う夢どう思う?」
「うーん、みんなを泣かせんだったら良くねーよ」
「うん。ナルトは、自分が嫌な事には嫌と言えるでしょ?」
「あ…」
「でしょ…だから、ナルトがあの子ぐらい強くても、あの子と同じには、ならなかったよ。ナルトはナルトなんだから」
ナルトは、カカシの温かい言葉に嬉しくて、涙が零れそう
「…ありがと…カカシ先生」

縁側に寝転がり、ナルトは、ほんの少しの照れくささと、尊敬の気持ちも込め、カカシにふわりと微笑んだ。

その優しげな微笑みは、この子供が好きな大人にとっては、理性を突き崩すには、効果抜群な物だったので、
思いっきり本能に負けそうになり、たじろいでしまうカカシ。しかし、そこは、大人のプライドもあり、己を保とうと必死に耐える。

「所で、ナルトはイルカ先生だけが大切な人?」カカシは話題をすりかえる事にした
「へ?」
「先生だって、ナルトの事認めてるんだけどなー?」
「カカシ先生…」
「それに、サスケも、サクラも、認めてるんじゃないかな?」
そう言われて、また、ナルトは嬉しそうに笑う。

「…だからさ、オレ……達も、大切な人に入れてくれないの?」

「なーに言ってるんだってば!カカシ先生だって、サクラちゃんも、サスケも…。ちゃんと入ってるってばよ」
「…やっぱ、…みんなと同列なのね…」と、カカシは、かくっと情けなく頭と垂れる

何故か、落ちこんでいるカカシに、ナルトは起きあがりながら、イタズラを思いついた様な顔

「なんで、先生がヘコむんだってばよ!」とカカシの背を軽く叩いた

ドボーン

見事にカカシは海に落ちてしまった
「ええぇーっ!!カ、カカシ先生っ!!」
海を覗きこむナルト。カカシが、楽しそうに笑いながら「おかえしー」とグイっとナルトを海に引き摺り込む

どぼーん

ナルトも海に放り出される

「げほっ!うえ〜〜。しょっぱー、ぺっぺっ」海面から顔を出し、酷い目に合ったとナルトは、その顔を歪ませた。
そんなナルトの表情をじっと見ながら、カカシは、どこか吹っ切れた様な顔をして…人の悪い笑みを浮べる。
「そんなにしょっぱいの?」
自分も少しは味わっていそうな物だが、そんな事をナルトに聞いている
「んなの、しょっぱいに決まっ……」
海水が目に入って、目をしばしばさせているナルトの唇に触れる何か…思わず、目を見開いたナルトの瞳に見えた物は、銀色の色彩。
自分の舌に絡みつく熱い何かは…酷く熱い気がするのに、心地良く、そして、どこか懐かしいと…言う感覚
……その蕩けるような感覚に、ナルトは只、身を任せる様に、カカシにしがみ付くぐらいしか出来ない…力が入らず、それさえも、ままならないが

「…っ……んーんーー…んーっ!…」
息を口で、してしまってたせいで、だんだん、ナルトは息が出来なくなって、カカシの体をドンドンと叩く。
それが離れ、解放されたナルトは大きく息を吸いこんだ、潤んでいたナルトの瞳から、緩んだ涙が零れる
「ホントしょっぱい」
そんなカカシの言葉が聞こえ、またしても、それが触れる

その触れた瞬間、
海の中に沈みこむ。再び、海面に浮上した時、やっと、それが離れていった。

そして、ナルトの耳に掻き消されていた波音が聞こえ出した

夢見るようにナルトはカカシの顔見る…口布がないカカシは優しく微笑んだ

呆然と、ナルトは手で唇を確かめる様に触れる
カカシの顔を何度か見返し、だんだん顔を赤らめていく

「キ、キ、キ、キスゥ?」

それが、なんだったのか気が付いて途端にパニックになるナルト

「…ったく、さすがは意外性ナンバー1。海に突き落としてくれるとは思わなかったよ。つっ、傷に染みる〜」
数日経ったとは言えど、最初に再不斬と戦った時と同様に、カカシの体は本調子ではなかったし、しかも、傷まで負っているのだ
その事に、ナルトは今更ながらに気が付いた。
「ご、ごめんなさいってば!!カカシ先生、傷だいじょー………あれ?顔隠してる」
ナルトが気がついたらカカシは口布をしていた

「…そ、……そっか、あれってば、幻術?あー!やられたー!見事に引っ掛かったってばよ!!」

それを聞いて、あきらかに不機嫌な顔をして海から縁側に上がったカカシは、まだ海の中のナルトに手を差し出す
「だ…大じょーぶだってば」
その手を断って縁側に手を伸ばすナルトだが、その手を強引に掴まれる。
「遠慮しないでいーぞ。」
と言うとカカシはにっこりと笑う。ナルトは、それに戸惑いながらも、縁側に引き上げられる
握ってた手は離したが、カカシの片手はナルトの腰を軽く抱いたまま
「二人ともビショビショだねーv」と笑っている
「でもさ、でもさ、カカシ先生ひでーよ。あんなの………」
「あれは、ホントのキスだよ」
「え…」

驚きながらカカシを見上げるナルト。
カカシの隻眼は口布がなかった時と同じ優しい微笑みを湛えていた

「カカシ先生………ど…どーして……こんな事すんの?だって、カカシ先生知ってるでしょ!オレってば…オレには…バ」
「ストップ。」とナルトの口に軽く指先を突っ込んでいる。
そして、「それ以上は、ナイショでしょ」とにっこり笑う

「…じゃ、ただ意地悪してんの?」
「違うって、意地悪してるんでもないの、…あのねー。どーしてかって言うと、それは…」


 ー―…だよ。


耳元に囁かれたカカシの言葉に、ナルトは段々真っ赤になって行く


ナルトを抱いていた手を、カカシが離すと、その場に、ちょうどやってきたツナミが濡れ鼠の二人を見て
「ナルト君、先生も、どーしたんですか!ずぶ濡れで!」と驚きながら声をかける。

「イヤ〜、ふざけてたら、一緒に海に落ちちゃいまして。ね、ナルト」
「……うん。巻き添え食わされたっていうか…」


お風呂に入る前だったので、ちょうど良かったので、風呂場直行である
「一緒に入るv」
「それは、エンリョするってばよ」
「そー、残念」

カカシを先に入れさせ、縁側で風呂待ちのナルトが赤くなりながら佇んでいた

「………オレも、大好き…」

そう、口に出していうと、ナルトはどうしてだか、酷く照れるのに、凄く嬉かった。

背景はこちらから
FIN

後書き:シリアスに波の国での心境を絡めようとしたのに…が、如何せん、カカシが…なー。
……いきなり、キスで告白かよ?(苦笑)ま、告白は、カカシからさせたかったので…書いて無いけど(笑)…かなり、気障な事を言ってると(逃走)04.8/11