Happy Birthday
by.石礫
「だからぁ。ナルトの誕生日なんだよ」
「うん」
「ナルトが欲しい物なら、なんでも良いんだって…だからぁ。プレゼントは何が良いの?」
「いらない」
カカシが「プレゼントは何が良い」と聞くと、ナルトは「いらない」と答えるという押し問答が、繰り返されていた。
「ナルトの強情っぱり……言うまで口聞いてやんない」
カカシがぷいっと横を向くとナルトが焦り出す。
「……あ…」
ナルトは、何かを言おうとするが、言う寸前になると、表情を堅くして言い淀む事を繰り返す…カカシは、それにずっと気づいていた。
「ダイジョーブだよ…言って。ね。ナルト…オレを信じて」
その囁きかける声と優しく微笑むカカシの表情に、ナルトは、ほんの少し頬を赤くして…やっと観念したように口を開いた。
「んとね……かぁし……………ほしー」
ナルトの発した言葉(消え入りそうな小さい声ではあったが)に、カカシのほうが大いに焦った。
えええーっ!!オレって!?い、いくらなんでも…それは、まだ早いでしょ!…で、でも、ナルトが望むなら…シても、い…
「かぁし!て…つないでほしーってば!」
カカシが返事をしないので、ちょっと怒った様にナルトは声を荒げていた、
「……てつないで?…って…手?」
こくりと頷くナルト。
そ、そっちかー!!
カカシの単なる聞き間違いであり、勘違いだった…
「って、手なら、いつも繋いでるでしょ?」
首を傾げるカカシに、ナルトは首を振り
「いっつものじゃない!なるとすんの」
……あ!そーか。ナルトから握ってくれた事って、なかったよなv
「や?」
「やじゃないよ!!いいよvはい。」
カカシが手を差し出すと「ちがーう」とナルトに突っ込まれた。
「すんの!だんじょーび!!」
「……お、お預けなのね」カカシは、結局、がっくり。
−−−
そして、10月10日。
カカシは火影の家に行かなきゃならくなっていた…
前日。散々、三代目から、ケーキなどを持たすから、執務室に取りに来い!と言われてたのだ。
しかも、まだ、ナルトからは、手は握って来ていない…
「ナルトの事ヨロシクね。皆」
犬たちに声をかけると、カカシの忍犬達は大きく頷く。
…カカシの同僚曰く、“ベタな新婚夫婦”的に、ナルトにいってきますのキスをして出かけるカカシ。
そして、ナルトと犬たちはそんなカカシをお見送りと言う…ベタな光景が玄関先で見られる。
「ケーキに、パーティ料理じゃ。プレゼントもあるぞ。」
カカシの前にそろえられた荷物は結構な大物揃い。
…自分は、三代目達にいびられてるんじゃないだろうかと、一瞬…そう思い、カカシの顔が軽く引きつった。
そうして、荷物を抱え家に戻ると、パックンだけのお出迎えである。
「ただいま……ナルトは?」
「眠っとる」
犬たちに見守られて眠ってるナルトは、とても可愛らしく見えた
「…ナルト」
そっと、頬に触れ、髪を撫でる。その手に気付いたように、ナルトは眼をゆっくりと開けてカカシの姿を見つける…
「かぁし?」
「やっと起きた?」
慌てて起き上がろうとするナルトに向って、カカシは手を差し出す。
「?」
「あれ?握ってくれるんじゃなかったの?」カカシから、水を向けてみた…
「あ」
ナルトは、戸惑いながら、カカシの手にそっと触れ…ゆっくりと確かめる様にその大きな手を握り、
心が蕩けるような微笑みを見せてくれたのだ。
ま、ある意味…オレが、ナルトから貰ったよーなモンなんだけど…ナルトの誕生日なのにね
FIN
後書き:ほのぼの甘甘のカカちまナル。32巻の相談役。ナルトの事を案じてる様に見えたので…世話焼いてそう
火影の家とは、そんなに離れてない別邸の様な離れを住まいにしてる設定にしておこうかなぁ06.10.10