Dream Catcher

一つ前に戻る

by.石礫


無意識の恐れが見せるのだと思える悪夢

それの登場人物は、オビトだったり、師であったり、リンだったり、父親であったり…あるいは、ナルトであったり
蔑む様に、あるいは哀しげで、時には歓喜し。夢の住人はオレを責めるように…様様な状況を見せつけ、様様な言葉を連ねる

 『過去すらも、あの子に話す事が出来ないと言う事は
  お前の過去を、あの子に話して、嫌われるかもしれないのが怖いんだろ』

悪い夢を見てから目が覚める時は、飛び起きる事も出来ず…そして、目覚めると、必ず、左眼が痛む

ああ。そうか、もう、9月だ

…誕生日が近いから…こんな夢見たのか
誕生日頃の昔のオレは、かなり情緒不安定で普通じゃなかった
でも、いつの間にか、それも起きなくなっていたが、こんな夢をみる事で、その時の感覚が突如として蘇る


ナルトは横で眠っている。起こさないようにベットから身を起こすと、洗面台に向う。
棚の上の方…自分でも爪先立ちしなきゃ取れない位置に置いてあるピルケースを手にとる
中身を確認「んー。ちょっと少なくなってきたかな…」

それは『免疫抑制剤』と言う名前の薬…移植した写輪眼への拒絶反応を抑える為に飲まざるを得ない薬
適合率が高かった為に、飲む量は、それほどでもないが…それでも、親友の形見を維持する為に、今だ…手放せない薬

ケースを元の位置に戻し、取り出した薬を飲み、息をついていると
「大丈夫?」と起きて来たナルトが声をかけた…

気が付かれてないと思っていたけれど…うなされて起きるのだから…気付かれない訳ない

とは思うけど…

意外性ナンバー1は…こう言う時に限って、気配を消すのが、やたらと上手くて
毎回、驚かされるが、驚いているとは思わせないように誤魔化しながら笑って見せる

「なんでもないから、心配すんな」
「…そ」
「明…今日は早い集合時間なんだから、寝よーよ」とナルトの頭を撫でる


不意に、夢の中で言われた言葉が過る

『お前の過去を、あの子に話して、嫌われるかもしれないのが怖いんだろ』

ああ。そうだよ。…嫌われたくないよ…そんなの当たり前でしょ…


前に見つかった時には、口上手な自分は思わず誤魔化してしまい…いつのまにか、話すタイミングを失ってしまっていたのだ


ナルトが傍にいると、使い物にならなかった誕生日の頃でも、まともに任務が受けれるようになり
今は、その時の分だと、きっちり、五代目にコキ使われている。
…五代目は、その事は知らない筈なのに…と思っていたら、三代目がしっかりと、注意書きを残してたらしい

数日間の任務からカカシ班帰還。で、ちょうど、オレの誕生日だし。と、来たら、当然、ナルトおもちかえりでしょー♪
なーんて言ったら、サクラ達に、睨まれたのは、ま、良いとして…(良くないだろ!とか言われてるけど…知らん顔をしておく)


「冷蔵庫の中、空っぽだし。帰りに買い物だな」
「今日は、カカシセンセーの誕生日なんだし、オレが腕によりをかけてやるってばよ」
こいつは、料理の腕は良いほうである。これもまた、こいつの意外性

「で!先生は、何、食べてえ?」

「お前」

……うっ…
…ナルトォ…そんなに、思いっきり、睨まんでも良いでしょ(涙)

「冗談はさておき(いや、ちょっと本気入ってたけど…あ。何、そのジト目)そーね。秋の風物詩だし…秋刀魚の塩焼きかな〜」
「ジジクセー」
「人の好物にケチ付けんなよな」
「なんだよ、オレの好物にはケチつけるクセしてー」
「お前の場合は、過剰摂取って言うの」
「…か…じょー…?………あー。後はナスの味噌汁だっけ?」
「(逃げたな)」


買い物を済ませ、見ると…ナルトは雑貨屋の店先で、店員と何やら話込んでいた

オレの呼ぶ声に気づいて、戻ってきたナルトは何かを買ったのか…紙袋を抱えていた
その紙袋を「はい、誕生日プレゼント。」と、すぐさまオレに渡してくる

「…んなの、いらないって言ったろ…だいたい、オレの欲しいのは…」
「いや、言わんでいいってばよ…ベタ過ぎだし」
ナルトは、オレの言いたい事はすぐわかったらしく、真っ赤になって照れていた…本人は「照れてねー!」とか、強がってたけど

紙袋から取り出してみると…ナルトは、その中身に付いての説明をしてくる

「なんか、どっかの民族のお守りで……で、えっと、その蜘蛛の巣みてぇのが悪夢を捕まえる…って言ってたってばよ」
「ドリームキャッチャー?」
「…そう!それそれ!」

「『大いなる魂を信じていれば、夢を捕らえる網は、良い夢だけが通りぬけて、悪い夢は網に引っ掛かる
 網に引っ掛かった悪い夢は朝日を浴びると消えるという…それは、朝日と共に消えさる朝霧の様に』…だったか?」

「うん。カカシ先生、たまに、うなされてっから…うなされない為のお守りだってばよ」

そう言って…微笑んだナルトの顔を見てると
今は、振り払えない悪夢でも、いつか、ちゃんと振り払えて、全てを話せる。そんな気がした

「ありがとな、ナルト。」


FIN
後書き:拍手で前に置いてあったカカナル話を下敷きにして書いた物ですが、拍手のSSとは全く違う話になりました…
カカシ先生が戦闘ですぐへタるのは、そういう薬を飲んでるせー?と、考えると…以外と辻褄合っちゃうのか…06.09.14