黄金の髪をした君の姿を心に思い描く

森での出来事の真実は…ナルトを忍者にさせる為に三代目が張った伏線と罠
善玉へと育てられた中忍と悪役にさせられた中忍と自分を信じ切れない子供に用意された舞台演出。
全てが予定調和

ま、こんな事…あの子が知る必要なんて、何一つも無いのだけれど


All that glitters in not gold


一つ前に戻る

by.石礫


真実は時として残酷なのだと…誰かは記した

誰かを思うが故に、その思いは他人にとってはとても残酷な事だったと言う事もありえる…
知っている事実と、知らない真実は、
どちらとも、同じ出来事であるのに関わらず…視点を変えてみると全く違う出来事となってしまうのだ。


あれは、全て、君に出会う為に用意された春。

忍者学校では、卒業間近の生徒に対する卒業試験が行われるのだが
卒業試験は一度ではなく数度行われるのが慣わし(補習としての扱いか、あるいは事情で、受けれない場合があるからだ)
……一回受ければ、誰でも受かると言われてるので、一度に殆どの生徒が受けるのである…


「ナルトのヤツ…なんで受からないのかの?…カカシよ…この結果どう思う?」
ナルトが前倒しに受けさせられた二度の試験結果にぼやく三代目火影
主観を言う事が前提で尋ねられたカカシはそれに答える
「ナルトは、自分に自信が持ててないのでは?心のどこかで、忍者になるのをためらってる様な気がします」

カカシは、自分に課せられた任務の依頼書を受取る

「んー。三度目の試験の日は…ちょうど、この任務の帰還予定の頃ですね、自分が帰ってくる頃には、合格してるのを願ってます…」

火影室から出ようとしたカカシが、三代目をチラリと見ると、窓の方を向いていた三代目は、忍者学校の教師名簿を見ていた
…一人の教師の経歴を、やけに熱心に読んでいる…『ミズキ』と言う名が見えた



早めにカカシが帰って来た時…事件が起こっていたのだ。
事件の一部始終を見守ってから、カカシは踵を返して火影の所に

「…わざとナルトに封印の書を盗ませましたね。」
「何を言っとる…あれは、ミズキがそそのかしてやらせた事じゃよ」

「確か…名簿の「ミズキ」の経歴をやけに熱心に読まれてましたよね…あんな程度の中忍、思惑通りに仕向けるぐらい…貴方には容易い事では?
…それに、イルカって中忍以外、あの森に近づけさせない様にさせてたみたいだし」

「はて…そうだったかの?」
「で、そんな事とは梅雨知らずな悪役の処遇については、いかがなさ………」
何かに気づきカカシは扉の方を見る、トントンと遠慮がちに叩く音。
「ナルトを呼んどったのじゃった。 ナルト、入って良いぞ」

ゆっくりと扉は開かれる…ナルトがそっと隙間から覗き込む、中には三代目だけだ

「どうした?ナルト…何遠慮しとる」

中を確認したと同時に額当てをしたナルトが誇らしげに扉を勢いよく開けた

「ジャーン!オレってば、卒業試験受かったってばよ!!」

「おおっ、そうか!よくやったぞナルト。」
「うん。さっき合格祝いってイルカ先生にラーメン奢ってもらっ……」風が自分の頭を撫でる様に流れた気がする。
ナルトは不思議な顔をして周りを見るが、入って来た時と同様、三代目と自分以外誰も居ない

「どうした?」
「なっ、なんでもないってばよ。あ、じっちゃんごめん。これ返すってば」と、封印の書を三代目に渡す

「それはそうとナルト。今まで済まなかった…お前に本当の事を言わずに居て」
「……ま、しょうがないってばよ!そうするしか、なかったんだろ?」その言葉を聞いて三代目が、とても切なそう顔をする
「……ナルト…」
ナルトは…微かに、自分達以外の誰かが自分の名前を呼んだ気がしたので周りを見たが、やっぱり誰もいない

「………さて、ナルト。お前にその事を喋ってしまったミズキ…は、どうして欲しい?」
「え?」
「お前が、厳しい処分を望めば、その通りにするぞ」

「…あ、あれは…」




ナルトは部屋を出ていった…間を置いて…息をついた三代目以外の存在

「もう良いぞカカシ。術を解いても」
 迷彩隠れの術 を解き姿を現わせたカカシは疲れたように
「三代目、今回の報告書置いてきます。あの……下がって宜しいですか?」
「おお、任務、ご苦労じゃったな」



部屋を出て、外階段の上段の方で座りこみカカシはじっと自分の掌を見つめる
優しい瞳が嬉しそうな表情をしてると物語る



ははは……ついつい。……姿隠してたんだから気を付けないとって思ってたのに

それにしても、あのタヌキジジイ……何が「望めばその通りに」だよ!あんな言い方したらナルトは…ああとしか答えられないでしょ



「………さて、ナルト。お前にその事を喋ってしまったミズキ…は、どうして欲しい?」
「え?」
「お前が、厳しい処分を望めば、その通りにするぞ」

「…あ、あれは…ミズキ先生の…声のでけぇ独り言だってばよ!」
「独り言じゃと?」
「そーそー。あれってば、オレに向って喋ったんじゃねぇんだってばよ!!」





ナルト…お前なぁ…どこまで人が良いのよ

…あれは、つまり、ミズキに喋った事については問うなってナルトの意志…これで、オレも、ミズキってヤツに手出しが出来なくなった訳ね…




下忍と担当教官の面接がある日。三代目共に訪れたナルトの部屋。この部屋に直接入るのは、カカシにとっては久々であった。

テーブルの上から持ち上げた牛乳パックを元の位置に戻す
「それにしても、うちはサスケか…あのクソガキ…絶対、認定試験でボコボコに……
「あ?なんじゃと?」
「いや…なんでも無いです」

「で、結局の所…私がいくら尋ねても、おしゃべりな中忍の行方は明かしては下さらないのですね」
「お前でも、ナルトの意志を無視してまでも…じゃろう?」
「ま、そうですね。…では、私はそろそろ、忍者学校のほうに戻ります。部下達を待たせてますから」
「今は「部下になる予定」のじゃろ?」
「ああ、そうでしたね。あ。三代目、煙草は部屋に匂いがつくと思いますよ。…止されたほうが宜しいのでは?」


三人が待つ教室の前の廊下で
カカシは、柄にも無い緊張で震える手を何度もグー、パー、グー、パーと、閉じたり開いたり
「…落ちつけオレ。あっちは覚えて無い、初めて会うんだ」
決心を固め大きく息を吸い込むと扉に手をかけた…そして、頭の上に落ちてくる黒板消し。落ちるとぱふっと舞うチョークの粉
「ひっかかった!」
春の花が綻ぶような笑い声がした。それで、カカシの緊張はほぐれる


三人の子供達に語るは、下忍になるのは是か否かを認定する試験について…だが、実際はそれを行う前に、答えの出てる出来レース。
部下の思考と行動パターン見る事と、部下達を決められた答えへと仕向けるのが上忍に課せられた勅命
…下忍認定試験とは、裏を返せば担当上忍に部下達を管理出来るかを問われる試験なのである
ただし、それは口外無用で、知っているのは、火影と下忍担当をしている者達のみだった


表に見えている事実の裏にある真実…隠されている大人の事情ってものは、そんなものなのだ。


FIN

後書き:春と言えば出会いの季節。中忍試験が7の月だから、あの出会いはきっと春だよねぇ?
こういう裏もありか?認定試験って数を限定する所に事前協議ありそうだし(^_^;)で、きっと、裏から手を回しカカシは前年まで落し易いのを…(苦笑)
光る物がすべて黄金とは限らない…カ○ビ?(爆)06.04.12