Gentle barrier

一つ前に戻る

by.石礫


その日は、


「ごめん。カカシ先生…出来れば…明後日まで家こないでってば」


突然、そんな言葉を言うとナルトは、自分の家に帰ってくれとカカシを家から追い出した。
追い出されたカカシは呆然とする。


その日は、10月9日…ナルトは眠れなくて一晩中、起きていた


何度も考えた…

今の自分は、それから逃げて居る。このままで良いとは思えない…だから、どうするべきか?
決意が出来ずに眠れなかった

日付は容赦なく変わり


その日は、10月10日。その日の朝の光に、全てを決めた


黒い服を着たナルトは、ガチャと外に向う扉を開く

「…カカシ先生!?」

カカシが目の前に居た。…彼も、黒い服を着てた

「慰霊祭、行くんでしょ?」

「…なんで、そうだって、わかったんだってばよ?」
「愛の力」
「はい、ウソ」
ナルトのツッコミに、カカシがヘコむ。
「ご、ごめん。ヘコまないでってばよぉ!ホ、ホント!愛の力だってばねぇ!すげー!!」


まだ早い朝の日差し…
「ま、慰霊祭には、まだ早いし…先に、慰霊碑の方行く?」
「うん。」

「はい、ナルト。用意なんてしてないでしょ」
とカカシは花束を手渡す
「あ、ありがと、カカシ先生!」

慰霊碑に花束を捧げ、二人は祈った。
そして、ナルトはどうして、慰霊祭に行く事にしたのかを、率直に語る

「行くの嫌って、ずっと逃げたまんまじゃダメだって、思ったんだってば……」
「ナルト。」
「なに?」
「大丈夫、全然怖くない。どうしても怖くなったら、オレの手握ってれば良いよ」
「………うん」



二人は、慰霊祭の会場の前に来た。
入る前に立ち止まり、ナルトは大きく息を吸いこむ。そして、会場に一歩足を踏み入れた

ナルトカカシの姿を見つけると、会場にどよめきが起こる
そのどよめきに圧され、ナルトはカカシの手を思わず握ってしまうけれど…真っ直ぐ前を見て、中に入って行く


会場で、イルカの姿を見つけ
「………イ…」
名前を呼ぼうとすると、カカシが握ってた手を強く握ってきたので…思わず、ナルトは苦笑してカカシのほうを見てしまう

「……だからぁ〜。全然、そんなんじゃないってばよ」
お前がそのつもり無くてもぉ…周りがほっとかないっていうかぁ…」ブツブツとカカシがぼやいて居る

そんなやり取りしてると、イルカの方から、こちらにやって来た、その顔は凄く嬉しそうだ

「ナルトォよく来たな!ホント、よく頑張ったぞナルト!」

嬉しそうに、ナルトの頭を撫でようとするイルカの手を素早くカカシが叩き落す
「何すんですか、カカシさんっ!?」
「虫が居たんですよ……」
「…あなたの方が、よっぽど悪い虫じゃ無いですか。」
睨み合いのイルカとカカシ。そんなやり取りに、ナルトがまたはじまったと、ため息をついていると

「ナルト!」

彼等の周りに仲間たちが集まってきた。そうして、でかい人の輪が出来た
そこに向って「九尾」に順ずる言葉を言おう者なら、人の輪は殺気を込め、その人間を睨みつける

「安心してナルト!誰かが何か言って来たら、私がぶっ飛ばすから」
サクラがそう言うと、オレもオレも!と、みんな、必殺の攻撃をぶち込むと言い出す
「…あ、ありがと。そこまでしなくて、大丈夫だってばよ!」

その申し出に、嬉しいやら、申し訳ないやらで、ちょっと複雑な笑顔を浮かべてしまう。
そこに居たのは優しい障壁達だった。



会は緩やかに終わり、ざわざわと帰る人の波。
ナルトが居たからと、大した騒ぎは起こらなかった…それとも、障壁達が守ってくれたお蔭だからか?


ちゃんと、済ませれたと安堵した…ら、ナルトは何故か身体がふらつく感覚におそわれる

「!?」

握っていたナルトの手が緩み…カカシの横でナルトは倒れ込む…

「ナルト!?」

その騒ぎに、散開していた仲間たちも何事だと集まってくる。

ナルトは、倒れきる前にカカシが抱きかかえていた。

「くーーー」

ナルトは見事な寝息を立てていた。全員、かくっとこける

「…昨夜は寝れなかったみたいだし…よっぽど緊張してたんだな」と、カカシが言うと
「(ッて言うより、お前が寝かさなかったんじゃないか)」全員が、そう思ったのであった。…全く信用無しだ


幸せそうな寝顔に起すに起せず。結局、カカシがおぶって帰る事に
仲間達も居て、人の輪が出来て居る、分かれ道にさしかかると少しずつ輪の大きさは縮んで行く

何人かはいつの間にか持っていたナルトへの誕生日プレゼントを渡してから去って行く
(カカシは忍犬を口寄せしてて、忍犬達にそのプレゼントを持たせていた)

最後の分かれ道で、

サクラが紙袋を渡す…中の箱からは、微かに良い匂いがする
「シフォンケーキです。ちょっとリキュールが利いてて微糖ですから、ナルトと一緒にどーぞ。」
「お。ちょうど用意してなかったんだよね。ありがとサクラ。」


ナルトの家の戸の前に来ると、カカシはナルトをおぶり片手に紙袋持ったまま、扉を開け家の中に入る。
「ただいま……はぁ〜」家の中にはプレゼントの山…思わず壮大なため息が出た

そっと、ベットにナルトをおろし、眠るナルトの顔に軽いキスを降らせカカシは優しく笑う。

「ナルト、誕生日おめでとう。」

今やっと、今日だけの言葉をカカシは贈れたのだ


今日はキスだけで済ましてあげるからさ…静かに今日の日を過ごそうよ。
だけど、今日中に起きてくれるかな?

FIN

後書き:ナルトの誕生日(昨年の誕生日話にビミョーに繋がってる?)如何せん…周りが周りなのでシリアスに出来なかった(^_^;)05.10.06