Forgetting memories

一つ前に戻る

by.石礫


人は忘却しながら生きていく…



彼の人は言った
「任務に入るとしばらく会えないんだよ」

オレは答える
「ニンジャはニンムのほーがダイジだもんね」
ほんとにいいたいのはちがう
「ウソツキ!いらないからすててくんだ!」


そして、その人はいなくなった

ずぅーといっしょにいてくれるっていったのは…やっぱし、ニンムだったんだってばよ?

もしも、なるとが火影になったら、いるって言ってくれたの?

でも、もういない

オレは、はじめから一人だったんだってばよ

そこには最初から誰も居なかった

ただ、それだけだってば

それでも、涙が零れる

手を伸ばすことさえ許されないけど…決して届かない言葉だけど…ただ一言だけ我が侭を

そしたら、きっと、あの人の姿も声も忘れるから…

思い出せなくなるから


「――――――ない…ぇ………ぁしっ」
空が白む夜明け前の突然の覚醒…そして、中空に伸ばした自らの手をナルトは見つめる

夢を見てたと思うが、夢の内容ははっきり思い出せない、起き抜けに叫んだ言葉さえ思い出せない
ただ、わかるのは夢に出てきたのはひどく小さな自分だった事だけ、

「…小さい頃の事なんて何も覚えて無いのに……あれ?」

そして、自分が泣いていた事に気が付く、慌てて隣を確認する
隣で眠って居るカカシには気が付かれなくて良かったとホッとする

「ごめんな」
眠るカカシの口からそんな言葉が聞こえた…はっきりとした寝言だった

「謝ってる?カカシ先生ってば、なんの夢見てるんだ?」

ナルトの声がうるさいのか、少し身じろいだりしたが、カカシはスース―と寝息を立てて居た。
ナルトはまた眠くなってきた。今の時間帯ならば、起きるより、眠った方が良いと、再び、布団に潜りこむ
カカシに摺り寄るとすぐに眠りに落ちていく


ナルトの寝息が規則正しくなるとカカシは眼をあける
隣を起こさない様に身を起こすと、まだ涙の跡が残る頬を撫でた



人は忘れる生き物だ…。

蔑みを受けても、忘却する事で自らを守る術を身につけた聡い子供。
必要な記憶は忘れない。不必要な記憶は忘れる
許容できる範囲までの記憶は忘れられない。許容を超えた記憶は忘れるしかない

オレが居なかった事にするしか、あの時のナルトには耐えられなかった

でも、忘れられた記憶は、そこから消えた訳じゃなく、体の奥に残ってる。そして、心の底で覚えてる…そう言う物。


オレが見せる何かに懐かしさを感じると、ナルトに言われる度に、歓喜が沸き起こる

幼い日の小さな心を傷つけたオレにとっては、…その言葉だけで、構わない
そう、思いながら…でも、心の片隅で、思い出してと切望して
小さな君の心の叫びを聞いてなかった…オレのバカさ加減を今更悔いて

「ごめん。」

…だけど、そんな月並みな言葉しか浮ばない
オレの自己満足にしか過ぎないけれど…それでも、そう、謝らずには居られないんだ



もしもだけど…

お前がオレと過ごした過去を思い出してくれたその時…オレ達、どんな風になるんだろうね?

今のままでいられると思う?
解決済みだって、許してくれちゃったりする?
今まで通り、オレに笑ってくれるの?

ま、嫌われそうだったら、泣いて縋るだけだけど


今度は、絶対間違わないつもり。ずっと一緒に…って約束、守るよ。…だから、ずっと傍に居させてよね。


FIN

後書き:こういう忘れ方は…激しいストレスが原因らしいです。今回は捏造過去話を踏まえた話…カカシのヘタレっぷりが目立つ気が05.8.18