Cherry blossom

一つ前に戻る

by.石礫


休日。朝から修行に出かけた。


一陣の強い風が吹いた…その風に紛れ込んでいた色を捕まえてみる

「桜の花びら?」

掌には桜の花びら。

「カカシ先生?桜の木って近くにあったけ?」
ナルトの声に、イチャイチャタクティクスを読んでたカカシが顔を上げる

「桜?………そう言えば、確か、近くの小高い所…そこにあったかな。」

「そっか。…じゃーさぁ。この花びらの主探ししてみねぇ?つーか、先生と花見したいんだけど、付き合ってくれるってばよ?」
いざなう言葉を口にする


日が傾き始めていたが二人で花びらの主を探しに行ってみると
丘の上に、桜の木があった。
鮮やか夕陽が桜を包み込む様に…夕陽に照らされた桜が、茜に染まっていく
美しいその一瞬に目を奪われてしまう



 ただ、何故だろうか…この景色を幼い日…それも、今と同じような位置で見た気がしたのだ

『キレーだってばよ』過去のオレはそう呟いた

「…キレイだよね」カカシ先生がぼそりと呟く

『夕陽でまっかになったら…茜桜っていうんだよ』もう一人…そう答えた誰か

「夕陽で真っ赤になるとね、茜桜って言うんだってばよ…」気が付いたら誰かの様に答えてた

オレの答えに先生は、何故か、一瞬、ビックリしたような顔をした

『・・・は、なんでもしってるってばよ』過去のオレはその人にそう言った

「ヘー。そんな言葉、よく知ってるねぇ」

何故だろうか、幼い日とは逆に会話を準えている気がするこの既視感は
そして、何故だか、カカシ先生の顔をずっと見ていたいと思うのは


「……ん?ナルト?さっきから変だぞ。どーした?」
「ううん…な、何でも無いってばよ…ただ」
「ただ?」
「…前にどっかで…こんな事………あった気がする……」
「……」

「夢…でも見たんじゃない?」
「夢?」
「そう、夢。」
「そーなのかな?」

夢見草」誰かの声とカカシ先生の声が重なった

「え?」
「桜の異称。夢見草って言うんだってさ、だから、夢に出てきそうでしょ、何となく」
…どうして、…同じ…事…
「え?」
その誰かが、今、カカシ先生が言った事と同じ事を言ってた気がしていた…
どうして?と聞きたかったのに…なのに、先生の笑顔を見てると何も言えなくなった


「ナルト。今日の晩メシ、外食にしない?」
「じゃ、一楽ね!勿論、カカシ先生が奢ってくれるんだろ?」
「んー………わかった、奢りましょ。」

「なら、カカシ先生!善は急げってばよ!!」



 吹き降ろす様に強い風が吹き、舞う桜の花

桜吹雪に過去の君が寂しそうな顔をする『キレーなのに…さびしいってばよ』

だから、オレは、過去の君が言った言葉を、キーワードの様に紡ぐのだ

「キレイなのに、寂しい気がするね」

その時、過去のオレは『散るのはね…また会おうって意味だよ』と答えた

「散るのは…また会おうって意味だってばよ」

君のその答えは、オレの忘れ得ぬ思い出にある言葉…君が覚えている筈の無い言葉

「そうだね。」
その言葉に答えてから、ほんの一瞬だけ過去へ思いを馳せる



カカシは丘の上に視線を移した。あの桜は鮮やかな茜色は今は無く…薄墨の様な色を見せている

「もー、何してんだってばよ!カカシセンセー!」
「はいはい。」


たぶん、あの色は、風が吹けば明日、あるいは数日中に殆ど散ってしまうだろう

FIN

後書き:茜桜って光景はTVでみたんですけど、凄いキレイだったので。桜は散るからこそ美しい物……背景は去年、自分が撮った写真を加工して使用(^^;)05.04.25