Birthday gift

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by.石礫

「精次さん。ホントに何か欲しい物無いの?」
「何も無いから用意しなくて良い。…明日も、ここに居ろよ。…ヒカルがいれば、それだけで良いんだ。」

17日になった瞬間に…「精次さん、誕生日おめでとう」と微笑むと、彼は耳元で「ありがとう」ととても優しく囁く、
だから、今夜は、彼の誕生日を祝う甘い夜。



17日の午後の夕方…。ヒカルは緒方のマンションで、仕事に出掛けてた緒方の帰りを今か今かと待っている。
チャイムの音。インターホンで誰か確認すると、急いで部屋の鍵を開ける。
「もー、鍵持ってるんだから、自分の鍵で開けなよ」
そこには今日が誕生日のここの家主の姿。

「緒方先生、おかえり」
「ただいま。」

内鍵をしめ、コートを脱ぎながら、緒方は気がつく
「……ん、なにか、イイ匂いがするなぁ。」
「先生の誕生日だし。今日はオレが料理作ってみました」

緒方は突然ヒカルの右手を掴んだ。
「なに?」
「…怪我は、してないな。」と緒方はホッとする
「なにそれぇ、かなり、あからさまじゃん!」
「オレ達は棋士なんだぞ。指を心配するのは当たり前だろ。」
「むっ、心配性!オレが、怪我するかよ!そんなドジじゃないって」
緒方はヒカルの左手を掴んだ。
「だったら、これはなんだぁ?」
意地悪く尋ねる。掴まれた手のその指にはバンソウコウが巻いてある
「………あれれ?」
ヒカルは明後日の方を向き思わず苦笑い。そんなヒカルに、優しい笑みを浮べる緒方。
「不器用なんだか、器用なんだか…」
ヒカルの左手を自分の口元に持って行って、指先に口付ける
「…んっ…駄目だよ。ここで盛っちゃ…ねっ」
「進藤がオレの為に用意した料理を食わない訳無いだろ。」


ヒカルの用意した食事
「はい、今日はワインを用意しておきました」
「お前にしちゃ珍しい。明日は雪降るな。」
「もー、どうして、そう言う事しか言えないかな。」

ヒカルは、オープナーでワインをあけようとしているが七苦八苦していた。
「オープナー貸せ」と、緒方にオープナーを奪い取られる

キュポンとコルク栓が抜ける音

「ありがと。先生、オレが注ぐよ」

グラスにワインが注がれ、グラスを合わせて乾杯。

「美味しい?」
「大丈夫、食えるぜ。」
「そりゃあ、どう言う意味だよ!」

食事を終え使用した食器は、備え付けの食器洗い機に入れるだけだから、後片付けもすぐ終わり

リビングのソファーに座りゆったり。

「欲しい物わかんなかったから、結局、先生への誕生日プレゼント買えなかったよ」
「何もいらないって言っただろ?」
「でもさ、ホントに欲しい物って、何も無かったの?」

「あったよ。」

「え?やっぱ、あったんじゃん!…なんだったの?」
「頼んで手に入れられない物だ。」
「何それ?」

「  」

ヒカルは、噴き出した。
「確かに、それは、あげられないね。それに、オレだって欲しいよ、それ。」
「…だろ?」


ヒカルを傍に招き、緒方はヒカルを優しく抱きしめる

「…今は、ヒカル…お前が欲しい。」

軽い口付けで、二人の想いを重ねる。

「ったく、言う事がベタなんだよ。……精次さんは…」

そして、どちらともつかずに、再び口付ければ……彼の誕生日を祝う甘い夜は再び訪れる。


FIN

背景素材こちらからお借りしました

後書き:1月17日は、緒方先生の誕生日なんで(笑)ヒカルのお料理。メニューはご想像にお任せ(←考えてなかったな…^_^;)