KISS OF LIFE

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by.石礫

ヒカルと緒方は、お台場でのデートを経て、晴れて?付き合う事になったが…
付き合い出してまもなくの頃は、緒方は本因坊や碁聖のタイトル戦などの対局スケジュールが詰まっていて、会う機会も殆どなく…
キスはおろか、手さえつないだ事の無いという…悲しいほど健全なお付き合いであった…。

オレ達って付き合ってるんだよね?と確認してるのは、携帯を介したメールと通話
『なんか、声が…もしかして、具合悪い?』
『…声で判るのか?』
『え?なんか、元気ない感じがしたから…』
『風邪気味なんだ…。』
『大丈夫?』
その後は優しいヒカルの言葉を無下にする下世話なトークになり、ヒカルが文句を言ってる間に緒方が通話を切ってしまうパターンだった

そんな会話を交わした後の棋院で行われる他の棋戦、対局中の昼休みに、緒方の様子をヒカルがこっそりと覗きに来た。
案の定、階段の前の椅子に座って煙草を吸っていた
「風邪気味だって言ってたから…気になってさー」
「なんだよ、風邪なんかで負けてるんじゃねーかと思ったか?」
「ちょっとね。」
「……信用ねーな」
緒方からは鈍い反応しか返って来ない、やはり本調子ではないようだ。
それに、結構、厳しい対局状況なのか、お世辞にも大丈夫そうではない、何となく疲れている。
緒方は眼鏡を外し目頭を抑えた…

「対局日、変えてもらえば良かったのに」
「頭ぐらい働く」
「他の先生方に伝染(うつ)したら悪いとか考えろよ」
「ジジイにでも、伝染してやろうかと」
「お年寄りに風邪でも引かせたら、下手したら命に関わるんだよ!」
ヒカルの言葉(しかも、真剣にそう思っているらしい)に、しばらく呆然としていた緒方は噴き出す
「あれ?オレ変な事言った?」
「いや、「さすがは、進藤先生!」って感じでなぁ…」
「……し、進藤先生って、なんだよ!!」

「で、熱は?」
ヒカルは自分の前髪と緒方の前髪も掻き揚げると、額と額を合わせる
「…!」
ヒカルがこんな行動に出ると思わなかった為に油断してたか、あまりにも、虚を付かれたのか、緒方は顔が赤くなってしまう
「熱…少しあるかなぁ?…あれ?どうしたの!?顔赤くない!!?」
「…な。…んな訳あるか!」珍しく、照れてしまったが、ヒカルの前ではそれをごまかす緒方であった

少し、疲れが消えたらしいが、まだ、復活って感じには見えない。
ヒカルは考えた。

 オレに何か出来れば良いけど…何も出来ないもんな…
 あ!…そうだ!…これなら…できるかも…でも、棋院なんかで…でも…したら少しは…ええいっ!いいや…しちゃえ!!


「緒方センセー」
「ん?」

ヒカルは緒方の唇に触れるか触れないかの軽いキスをした。

「し…進藤?」
ヒカルからのキスに驚く緒方
「ご、ごめん、したくなっただけだから」
ヒカルは赤い顔しながらキスの言い訳をした

「初めてが…お前からとは思わなかった」
ふわりと笑う緒方、元気になったとヒカルも柔らかく微笑む

「わっ!」

その瞬間に緒方はヒカルの腕を掴み、自分のほうに引き寄せた

緒方は舌を絡ませる深いキスをヒカルにする。

長いキスから解放されるとビックリしながら照れるヒカル
緒方が「御馳走様」とヒカルの耳元に囁くと、ヒカルは更に真っ赤になる


眼鏡をかけると緒方は碁打ちの顔に戻る
「じゃ、勝って来る」
「がんばって!」


FIN

後書き:うわー砂糖吐きそうでゾワゾワする。KISS OF LIFE…直訳すると「命の接吻」?良い感じー。辞書引くと人工呼吸って意味。