携帯電話が出てくるオムニバス

back


『購入』 『待ち受け』 『通話相手』『ルス電』 『連絡用』 『XXX』 『画像』

by,石礫

『購入』

ヒカルは和谷の携帯を見せてもらっていた。そして、皆が携帯を持って居る事をヒカルは知る。

和谷達に聞くと、かなり重宝すると言う
「月額払うと、棋譜とかも見れる?え、携帯使って打てるの?へー。便利かも…携帯。」
「進藤も携帯買えよ〜。使い出すと便利だぜ。」
「でも、オレ、キーボードとか打てないしなぁ…」
「大丈夫だよ。意外に簡単だから」と、伊角からの優しいお言葉

ヒカルは携帯電話を購入した。一応、説明書を軽く読んで見る。数人の携帯番号を書いたメモを取り出す。
電話番号の登録でもしようかと思った…ある人物の携帯の番号を見てると、ふと、電話してみたくなった


緒方は指導碁やらイベントやらの仕事が終わり、主催者達の酒宴の席に居た。

自分の携帯に着信が合ったらしい振動モードにしていたので、携帯が震えて居る。
誰からだと、画面を確認して見た。登録済みの人物ではなく見た事のない携帯番号だ。
長く鳴ってるので、切ってやろうかと思ったが、このクソつまらねぇ席を離れたかった口実で、それに出てみた
すると、通話先が『…あ…』と一声だけを発した。この声は……
「進藤?」
『……なんでわかったの緒方先生!?』
…その反応で、これは間違いなく進藤の声だと確信した
「どうした?何か合ったのか?」
しかし、声のトーンは明るい様だが…
『いや、…実は…オレ、携帯買ったんだ。で、今、その携帯なの。初通話なら、先生かなぁ…って、思っちゃってさ、ついね…』
…ったく…嬉しい事を言ってくれる。
「ほお?携帯ね。オレに相談も無しに?」
『それはごめん。…あ!もしかして、今、忙しかったの?ごめん、オレばっかり喋って、切るね』
「いや、今は、タダ酒飲んでただけだ。」
『え?飲んでるの?……あんまり、飲み過ぎないでよ。』
「ああ、心配すんな。」
一緒に飲んでいた連中がオレを呼んだ。
『呼んでるみたいだね。』
その声は、かなり大声だったらしく、進藤にも聞こえてたらしい。
「あー、いーい、オレが居ても居なくても大丈夫。それよりは、おまえと話すほうがマシだな」
『ダメじゃん!一応、それも仕事なんだしっ!戻んなきゃ』
「…ちっ、しょうがない、戻るか。…電話切る前に…なにか、嬉しくなるような事言ってくれないか?」
『………うーん。じゃあ…緒方先生愛してるよ。』
「上出来だ。…じゃ、進藤。オレも言ってやるよ。

  帰って来たら腰砕けにしてやるから、楽しみにしてろよ』


「・・・はあ?」一瞬、ヒカルは緒方の言葉の意味が理解できなかった
ヒカルがやっと、それに気がついて「バ、バカ、最低!!」と文句をがなり立てる前に、通話は切られていた


 後書き:セクハラ発言?言いそうだよな。スミワヤは夫婦ってイメージ(←おいっ)


『待ち受け』

携帯からの作られたシャッター音とフラッシュ
「ん、今、写した?」
「ああ」
「意外に綺麗に撮れてるね」
緒方の携帯の画面での自分を見てるヒカル。
「画素数が増えてるからな…。おまえも写してみろよ。」
ヒカルの携帯にもカメラは付いていたが写した事はあまりない
「オレ、使い方良くわかんねぇ」
「教えてやる」

そして、緒方に教えられながら、色々写す
「わーい、先生との2ショットv」二人で撮った画像を見て居る
「これ、待ち受け画面にするか?」
「待ち受け?」
「基本で、画像出てるだろ、これが撮った画像になるんだ」
「それは、ダメ!オレは絶対しない」
「どうして?」
「誰かに見られた時、なんて説明しろって!」

「恋人。」

「…ぜ、絶対ダメ!!」
「オレの待ち受けにしてアキラ君に「オレの恋人は可愛いだろー」と見せびらかすのもダメかー?」
「…塔矢に見せて、なんの意味があんだよ?」

「フフン♪あんだよ〜意味はぁ」
「何?」
「さ−ね。教えられないな。」


 後書き:アキラを牽制?ヒカルは気付いて無いようだ


『通話相手』

塔矢の所の碁会所で、オレは塔矢と打ってた。携帯の着メロがなった。…あ、オレのだ。

「進藤、携帯買ったのか?」
「うん、便利だしなぁ…あ、先生からだ。」
「先生?森下先生?」
「んーん、緒方先生」
「はあ?」

「先生!仕事終わったの?え、今?碁会所に居るけど…うん。わかった。後でね。」
ここの帰りに、待ち合わせてメシ食いに行く約束が決まる。早く逢いたいなぁ

「進藤…」

「ん?」あれ?塔矢ってば、妙に考えこんだ顔してるよーな?考えこむような盤面じゃないけどなぁ?

「緒方さんとは…どういう付き合いなんだ?」
「付き合いって…?」

うわっ、しまった。マズイって…いくらなんでも、恋人なんて、こいつに言えないっ…
なんでオレ、緒方先生からだって答えちゃったんだろう…油断してた!

「あー。今度、緒方先生に碁を打ってもらうんだ…前から約束してたんだよ」

碁も打たない訳じゃないし…嘘はねぇぞ!

あまり、納得いって無いような表情だったが、最後には、なんとか納得してもらった
 こいつに本当の事知られたら、多分、オレより緒方先生の方が大変だろうな…(溜息)あれで、塔矢には結構気を使ってる所あるし…


  後書き:ヒカルは緒方の方を考える訳で


『ルス電』

不意に、ヒカルは緒方の声が聞きたくなった…最近購入した携帯電話で緒方の名前を表示してから躊躇った
何故なら、二人とも対局が近いのだ。
携帯でも、…今、緒方と話すと、何となく、情けない事言いそうで…

ヒカルは妙案と言うか、妥協策を…思いついた。
「ルス電!ルス電なら声聞けるじゃん」
緒方は自宅にも電話を持っていて、留守電は彼の声になって居た
ドキドキしながら、彼の自宅の方の電話にかけてみた。留守電のメッセージでの彼の声が聞こえる

例え固定されたものでも緒方の声を聞けると、がんばるぞって気持ちになれた
「どこに電話してるんだ?」
ヒカルにかけられる今聞いていた声と同じ声。
「うわっ、なんで!ここに!!」
そこには緒方がいたのだ。ヒカルはそれに驚きながらも、わざわざ会いに来てくれたのかな?と思うと少し嬉かったりした
「オレはどこにかけたって聞いてるんだが?」

「わ、笑わない?」
「事と次第によるな」
無茶苦茶恥ずかしい事になった。
「…せ…先生んち」
「オレんち?居ないって、わかっているのに?」
「…だって……ルス電でも、先生の声聞きたかったんだもん!」
「おまえなぁ…直接、会いに来たり、携帯にかければ良いだろ」
「対局近いのに、会いに行ったり、電話するのって、エンリョするだろ!」
緒方は少し驚いた顔をしてから、思わず噴き出した
「……くっくっくっ。おまえって、意外と健気だな。」
「なんだよ!そんな笑う事ないだろ」
「悪い、悪い!」
ヒカルは思いっきり膨れっ面だが、それでも、緒方は大笑いしていた。


 後書き:可愛い…可愛すぎる


『連絡用』

その日オレは早く目が覚めた。
隣の人はまだ寝ていて、時計を見ると、仕度を整えてて出ても、ちょうど電車は間に合いそうな時間

「わりィ、オレ帰るね」

眠っている人には、聞こえていないかもしれないけど、そう、断りをいれるとオレは部屋を後にした

さすがに、少し早い気がしたので、コンビニで雑誌を立ち読みして、朝メシを買って家に帰った。

「お帰り。早かったのね」
「ただいま…、今日は早く出られたんだ」
「タイトルとかもっているのに、遅くまで碁を教えてくださるなんて良い先生よね」
「あはは、そうだね」

 『親に言えない事してるんだから、あんま良かねぇ先生だよ』 と心の中で思っていた

飯を食いながら、「あとで、メールしとこ」と思いつつ
ついつい、部屋に戻ると眠ってしまい、そのまんま連絡を忘れてしまった


そんな事があった、すぐの手合いの日。
勝ったので気分良く棋院を出ようとしたら緒方先生に呼びとめられ連絡ミスを思い出した。

「こないだ、オレに一言も言わずに帰ったよな」
「だって、すんげー気持ち良さそうに寝てたし…起こしちゃ悪いかなーって…ねv」
「言い訳か?で、連絡もよこさず、メールも出し忘れたのか…携帯もってても、テメーには宝の持ち腐れだなぁ」
「ごめん、ホント、マジでごめんっ!!ごめんなさい。」

とりあえず、謝ったのだけど…それ以来…先生の所に泊まる日は、先生が目を覚ますまでは、離してくれなくなった。

「なんで?」と聞くと、先生は「おまえはすぐ逃げる」と答えた

「オレ、そんなに逃げて無いよ!」

「逃げてない?じゃあ…おまえ… こども囲碁大会で名前も名乗らず帰ったのは?」
「はぁ?…先生居たの?…で、でも、あれは帰って良いって言われたから帰ったんだよ。」
「やっぱり覚えてなかったか…なら、塔矢先生の前に連れて行った時はどうだ。」
「…あ…、あれは逃げました…」
「研究会に誘った時」
「あれは、逃げたって言うか、断ったんじゃん」
「病院で逃げ出した事は?」
「…えーと…凄い迫力だったしー」
「囲碁ゼミナールでオレを避けまくっただろ」
「…え…?バレてた…」
「その行動が余計に目立つんだよ。で、あの後、顔をあわぜすに朝イチで帰っただろ」
「う・・・」

逃げたほうが多い事に気が付き、オレは明後日の方向を見るしかなかった。

「まだ納得いかないか?…なら、ほかに逃げたのも、言おうか?」
「も、もう、良いです。…た、確かに…逃げました。…ええ、逃げましたともっ!」
「分かれば、よろしい。」


 後書き:私設定の緒方先生はヒカルに逃げられまくってましたから…携帯ネタなのに、それ一瞬(笑)


『XXX』

緒方先生の携帯にヒカル君からのラブなメール…そして巻末に
「…XXX?なんだこりゃ?………芦原。おまえ、メールの最後にXXXって付ける意味知ってるか?」
「知ってますけど…もしかして、恋人からのメールですか?あ、緒方さん知らないんですかX?」
「そう言うメールもらうんですか…へー恋人から…」妙に覚めた目をしてアキラはイヤミみたいな事を言う
芦原は恋人さんに聞いたら良いですよと答えるだけだった。

芦原は喋ってた(笑)
「Xの意味。緒方さん知らないんだよ。あんな遊んでいるよーで、そう言う事には以外に疎いんだよ。面白いだろ」
ヒカルは心の中で溜息をついた

「あ、冴木くんvオレにメールくれる時はX付けてねーv」との芦原の言葉に
「嫌です!」冴木は即答だった
「恥ずかしがってるの、かわいーな」
「芦原さん、殴って良いですか?」

緒方はヒカルに聞いた
「Xって、なんなんだ?そんなメールよこしただろ」
「キス。…前にテレビで、そんなの見たから、やってみたんだけど…Xはキス一回だよ」
「じゃ、してくれ。書いた分のキス」
ヒカルは持ってた扇子で緒方をぶん殴った


  後書き:某マンガのX話を最近、再放送で見て 私のサエアシ像ですか(笑)


『画像』

あれは、何時だっただろ…そうそう、1年ぐらい前だ。碁聖を取った後だった
棋院に来て、そこに、数ヶ月前、長く手合いを休んでてたヤツを発見した。
ヴァーチャル水槽の前に進藤が居た。まるで、進藤が院生だった頃の、あの時の様に見入っていた。違ったのは独り言が無い事ぐらい…

何となく声がかけづらかった。
『なんで、手合い休んでいたんだ?』と尋ねて見ようと思って居たんだが
何か話題を見つけて話かけようと思って、そう言えば、自分の携帯がカメラ付きだったから、進藤を写してみた。
オレに気が付いて進藤はいつもの様に笑うんだが…携帯の画面には進藤らしくない表情が写っていた。

「おまえ、何、変な顔してるんだ?」
「変って?…あ!それ、もしかして、カメラ付き携帯?」
また、写して
「ほら、変な顔だ!」と画面を見せた
「うへーそんなに写るの?…あ!ちょ、ちょっと、ダメだって!それ消してよ!」
進藤は携帯を奪おうと身長差で届く筈ないが、懸命に手を伸ばす。オレも取られまいと上に上げる。

目が合った瞬間。進藤は固まった。怖がって居る様にも見えた
「あ、そう言えば、またタイトル取ったんだよね。オメデトーゴザイマス」
言い方が堅苦しく、一線引かれたような気がした。
「じゃ、さよなら、緒方先生。」と会釈をしオレの横を擦り抜けていく
「おい、進藤!」オレが声をかけるが、それを無視する様に走り去っていった

それからだった。
進藤に避けられはじめたのは…偶然を装ってみて声をかけても、何をしても…避けられ、逃げられた。
捉えたと思えば、気が付くと、すでにそこに居ない…そんな感じだった。

あの日、やっと、捕まえられたから、逃がせなかった。どうしても傍にいかった。
進藤とやっと話せて…理由らしい理由を、直接には聞いていないが…saiが居なくなったのだと知った。
そして、オレに対する気持ちを確かめた。

やっと、二人で、また笑い合えるようになれて、今は傍に居られる。そこにオレの居場所がある
進藤との画像は増えて行くばかりだが、消して欲しいと言われて消した画像は無い。別の形で保存してある

はじめて進藤を撮った、これには、いまでも、酷く惹かれる

 …寂しげな微笑み、今にも泣きそうで、それでいて、ひどく綺麗だった…


 後書き:最後はキレイに決めて見ました。捏造ですけど(笑)