週末はあなたの部屋で…

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by.石礫

≪まったりとした日曜日≫

「…動けるか?」

緒方は尋ねた

「…………絶対無理!」

ヒカルはむっとしながら答える

緒方は普通に服着てて。ヒカルは昨日のままで、まだベットの中。
昨晩の痕跡は処理されていて、それがあったとわかるのは緒方がヒカルの身に残した所有の証と
ヒカルの動けずに軋む躰と奥に残る鈍い痛みである。

「抑えるつもりだったんだが…」

「なーにが、抑えるつもりだっただよ!もうダメって言ったのに!!それでも、構わずやりやがって!!」
「口が減らねーな…。だが、よかったんだろ?」
彼がニヤリと微笑むと、ヒカルは昨晩の事を思い出してしまい真っ赤になる

「……するか?」
「…うえっ?昨日あんなにしたのにっ…」
「どーせ、今日はのんびりすんだし」

文句言っていたのに、緒方にキスをされると、その雰囲気に飲まれてしまうヒカル。その瞬間


ぐー―――――――っ


その、雰囲気をぶち壊す音…
「ハ、ハラへった〜〜」
そして、ヒカルが呟く、色気が無い言葉

「止めた。……これで、良いか?」
緒方は完全に気がそがれて、よくある、栄養がとれると言うゼリー飲料をヒカルに渡す

「………先生ってさー。何時も、こういうので済ましてるの?」
「時間の無い時だけだ。」
「今日は?」
「作って食べたぞ。因みに、おまえの分は無いからな。」
「ひでぇ…………これ、ハラの足しになるのかな?」
「少しはな」

ヒカルの朝ご飯が終わると、ベットから起きあがれない彼を残し、緒方はリビングの方に

その背中を見てると、ヒカルは途端に寂しくなった

「行かないで…」
「ん?…寂しいのか?」
「…うん、寂しい。」
「オレはやらせてくれないってのが寂しいな」
「ーっ!…もう!行って良いよ!」


ヒカルは寝室の中、一人になって、ふと、緒方の残り香を感じた
「あ、緒方先生の匂い。」
その残り香に緒方の存在を近くに感じる気がして、一人で眠っても寂しくなかった



昼頃、身体の痛みも何とか治まって来て、ヒカルは起きる。

昼食がちょうど出来ていた
「昨日も思ったけど、やっぱ、一人暮し長いだけあるよね。」
「………イヤミか?」
「さー?」

改めて、緒方の顔を見ると、ヒカルは、いたたまれないような、気まずいような、気恥ずかしいような、嬉しいような、複雑な気分になった。


今日は二人で碁を打ちます
「本当の勝負の場だと、きっと、違うんだよね」
「まず、こんな格好では打って無いだろうな」
確かに、彼のTシャツにジーンズなんてラフな姿など誰も見た事が無いだろう…

「これまでだな」
何度目かの勝負がついた
「ありません。」
ここで、負けたのはヒカル。その後は検討。…そして、また対局

ヒカルは現在は初段だが、実力は高段者と大差ないので、緒方と対局しても高段者同士に近い碁を打てる様になって居る。

ただ、ここで打って居る『vs 緒方』の数戦は、本質的には勝負の雰囲気とは、全くと言って良いほどかけ離れていて、
盤面を前にしつつ軽口を言い合ったりできるほど、どっちかと言うと「まったり」という感じなのである。

しかし、こんな場でも、まだ、緒方の勝率の方が高いので…ヒカルは、「もっと、もっと、強くならなきゃなー」と思ったのだった


とても、二人はのんびりしていて。ゆったりとした時間を過ごす。


「してもいいけど、明日は歩けるようにしてよ。」
「保証は出来ないな」
「…うっ…それなら「緒方先生にやられた」って塔矢に言ってやる!」
「ああ、言っても良いぞ」
「い、言える訳ねぇ」
そう言った後でヒカルは少しブルーになった。人に言えない関係なんだと改めて自覚すると泣きそうな気持ちになった
「わかった、わかった、抑えてやるから…だから、泣くなよ。」
ヒカルは涙は零してなかったので「な、泣いて無いって!」と否定する

いつも通りの軽口の応酬に、不意におかしくなって、二人は大笑い



≪はじまりの月曜日≫

昨日よりは身体の痛みは少ないので、起き上がるのに時間はかからなかった
今朝は二人で朝ご飯を食べられた

「帰るのか?」
「うん、研究会があるしね。先生だって仕事に行くんでしょ」
バックに、荷物を詰めながら答えるヒカルに
「まあな」相槌を打ついつものスーツ姿の緒方


「たまに、秀策の棋譜…見に来て良いよね…。」
「貴重品に触れ無い事、散らかさない事が条件だ」
「うん、条件は守る」
「なら、手を見せろ」
なんで?と言う顔をしながら、ヒカルは手を差し出す
緒方の手がその手の上に乗る。

「持ってろ。オレがいない時に来ても良い。無くすなよ。」
緒方の大きな手が除けられるとヒカルの手にはこの部屋の鍵があった。


FIN

後書き:製作する前は三泊…最終的に二泊三日になってました(苦笑)土曜の和谷の所の研究会をサボらせてごめんねヒカル(笑)
やっと、小説3のそこはかとない(?)セクハラ発言に繋がる訳ですわ。やっと、オガヒカを出来た感じ…
緒方先生普段着は…なんとなく……私の願望?…スリムなジーンズが似合いそう。