ヨミ切れるか?!

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by.石礫

緒方精次と言う人物について、進藤ヒカルがヨミ切れるのは、対局の結果についてだけである。


二人が職場で一緒になるのは…ヒカルと緒方の手合い日程が重なる時。たまにしか一緒にならないイベント等があげられる。


「お先に失礼させていただきます。」と言いながら、緒方は対戦後にやってた検討をとっとと切り上げた
「今回の検討はもう終わりますか?」と緒方に尋ねる今日の対戦相手
緒方は対局の席を立ちながら「ええ、まあ、…無性に、タバコ吸いたいんですよ」と苦笑した

階段の所に置いてある椅子に腰掛け煙草に火をつけた。
「緒方先生。手合い終わったの?」

階段の所に腰掛けてたヒカルが声をかける。終るとここに来ると緒方を待っていたようだ

「お前のほうは勝てたか?」
「うん。今回は下段相手だったしね」と答える
緒方はヒカルの顔を見ないで、声だけで満面の笑みで答えたとわかってた

緒方の目の前に来ると、ヒカルは、緒方の手を取って、緒方の手の平を『ぱしっ』と、手の平で叩く
「互いの勝利のハイタッチ〜♪」
「なんで、オレが勝ったってわかる?」
「わかるよぉ機嫌良いもん」
と、ヒカルは満面の笑み。こちらも、相手の機嫌は把握していた。互いの対局結果は空気を吸うより簡単にわかる

でも、あまりヒカルは緒方に近付いて来ない。
「なんだよ…昔も同じようなシュチュエーションでされたから警戒してるのか…でも、随分昔の事だろ」
「今、思い出しても…あれは無茶苦茶恥ずかしかったんだから…や・だ」
「絶対しないから、来いよ。」と、手で招く
「ホントかよ〜?」

緒方のほうにヒカルが顔向けると、絶対しないって言った傍から、引き寄せられ煙草の匂いがするキス。

「ぜっ、絶対しないって言ったのにっ!」
キスから解放されての開口一番のヒカルの言葉
「見てたが、いなかったから、平気だぞ」
緒方は目を開けながらキスをしてたらしい
「そーいう事じゃ無いだろ!!ただでさえ、緒方先生のは腰にクるんだからねっ!!」
「腰砕けになったら、お姫様だっこで運んでやるから、安心しとけ」
「う〜…」ヒカルは、つい、涙目で緒方を睨み付けるが、
緒方にとっては、ヒカルの何年経っても可愛いそんな表情を見たかった為の行動なので、してやったりであった
何年経っても、普段のヒカルは、緒方にこんな風にあしらわれてしまう。…いつまで経っても、それには慣れないヒカルだった。
まあ、こんな現場に出くわしたら、十中八九。見なかった事にされるとは思うが…(桑原先生に見つからない限りは…)

煙草を灰皿に押し当て消し、椅子から立ちあがる時
「…っしょ」と、言う感じで、緒方は無意識に声が出ると…ここぞとばかりに言ってくるヒカルの遠慮無い一言が降って来る
「こう言う時に、かけ声が出るのって年寄りの証拠だよね〜♪」
そんな一言にカチンッと来ながら、緒方はヒカルの肩を抱く
ヒカルはここが棋院であるし、恥ずかしいので離してくれというが、今は、誰も見てないから別に良いだろうと平然と言う緒方

それでも、とりあえず、肩においてた手は退けさせ、下の階に降りようとエレベーターを待つ事にした二人
そんな二人に声をかける人物が…。対局が終わって対局場から出てきたアキラだった。

「塔矢!」
「…アキラ君。」
アキラの登場に微笑むヒカルと嫌な奴に会ったという顔の緒方
ヒカルを巡る恋(?)のライバル出現に、再びヒカルの肩を抱こうとした緒方の手をヒカルは思いっきり引っ叩く。
叩かれた緒方のほうは、かなりムッとするのであった


三人はエレベーターに同乗。緒方を無視して、ヒカルとアキラは、凄く盛りあがる。

「進藤、暇があるなら、これから今日の検討をしようか?」
「いいね…行っ」答えかけたヒカルの答えが詰まる

今日はウチに泊まるってーのに、行けるわけ無いだろうがっ!!と自分達の後にいた緒方からの無言のプレッシャー

「あはは(汗)…わ、悪い!これから用事あったから、全然無理!ホント、ゴメンなアキラ。また、今度誘ってよ!」
と、申し訳なさそうにヒカルは謝る。アキラは気にしないからと言ってくれて、ヒカルは安堵する。

その後も、二人の後側にいる緒方は…剣呑な目をしてヒカルを睨み付けているのだが、
緒方を気にしないで、二人の会話は盛り上がる、盛り上がる……ので、後の彼は、マジ切れ寸前だ
後を見ていないヒカル達は…視線を感じて振り向くが、緒方はポーカーフェイスで普通の顔を作っている

「ところで、進藤は緒方さんと随分と仲が良いらしいけど…何かあるのか?」
話題がヒカルと緒方の事になった。思わず、ヒカルと緒方は顔を見合わせた

直接聞いてはいないが…実はアキラはヒカルと緒方の間が怪しいとは薄々感づいていたのである
それでも、アキラは兄弟子に遠慮無しでヒカルにアプローチしているようだが
…ついでに言うと、ヒカルに対して、そう言う感情を持っている人物が他にもいるらしい

緒方は一歩抜きん出てるが、実は、ヒカルが何故か男にモテモテ(笑)な事を知っているので、他者とのヒカルを巡るハラの探り合いだ
…如何せん、そう言う事に疎いヒカルは全く気が付いていないのであるのだが…(笑)


で、ヒカルのほうは、緒方の立場のほうを考えて、二人の関係は世間にバレちゃいけないと言う涙ぐましい愛情があったりする

ヒカルは『どーしよう』と緒方の顔を見ると、彼は『言って良いだろう』と言う顔。ヒカルにとってはかなりマズイ状況である。

「ああ、オレと進藤は…」
無い、無い、何にも無い!ある訳無いじゃん、やだなぁ。こんな人と、何かあったら人として終わってるって!!」
ヒカルは緒方の言葉を遮りつつ、弟弟子を前にして、あまりにもひどい扱いの力説である。
大否定の言葉に固まる緒方を、ヒカルは睨み付け、アキラには可愛らしい笑顔を振り撒くのだから…緒方にとっては最悪である。

ブチッ

恋人の自分の事を考えてくれて否定するのは仕方ないが…言いっぷりはひどい為、緒方はマジギレである。
しかし、人前でケンカする訳にも行かないので(ヒカルが怒る)…じっと我慢である。怒りを隠せずに引きつっては、いますが…(笑)


エレベーターが下に付くと
「じゃあなっ。」と緒方はわき目も降らず車を置いてある駐車場に向った。

「バイバイ、緒方先生。」「緒方さんお疲れ様でした。」

一応、他人(今回の場合はアキラ)の手前は、一旦、別れ、車の所で落ち合う事になっている。

「緒方先生…なんか機嫌悪くなかった?」
「緒方さんはいつもの事だよ。あの人はいつも変だから、」
アキラは無意識にトゲのある発言をしていたが、それはヒカルに軽く流される。

緒方が待って居るのはわかってるが、ついつい塔矢と話しこんでしまうヒカルであった
「またな。塔矢!」
「ああ、じゃ、進藤。」
傍目には仲良しなライバルのヒカルとアキラだった

ヒカルが駐車場に行くと赤い車の傍らで、緒方はタバコを吸っていた。
「お待たせ!………げっ」
で、緒方は、滅茶苦茶機嫌が悪くなっていた、



「緒方センセー。怒ってる?」と少々ビビリながらも様子を伺うヒカル
「ははは……オレをほっといてアキラ君と話しこんでたぐらいの事で…?」
緒方は思いっきり引きつり笑いを浮かべる

「めっちゃ、怒ってるじゃん。」

「何言ってるんだ、全然怒って無いぞ。オレと何かあったら、人として終わっててもなぁ
「あっ!あれは…えーと、そーの…あれは、かわいい言い訳って事で〜……」
ヒカルは、とりあえず、緒方が好きそうな表情でカワイコぶって見るが、それが通じる訳でも無く
「ははは…おまえが天然で、みだりに思わせぶりな態度をとってもっ、オレは大人だから全然余裕だぜ」
と言いつつ余裕は全く無く、怒りマークを数個つけている様な引きつり笑いで……緒方は滅茶苦茶ピリピリしている

…ヒカルは無自覚で思わせぶりな態度と勘違いされる行動が、ヒカル争奪戦のライバルと言える人物達にも出るので、
緒方にとって、それは大人の余裕が思いっきり吹っ飛んでしまう事態なのである。
しかも、彼は態度には余り出さないが充分に嫉妬深い性格である。(実際には、自分の感情に正直な為、バレバレなのだが)

緒方はアキラと話してたのでヤキモチを妬いてたらしいとヒカルもわかったのだが
「…その、思わせぶりな態度って何?そんなの、した覚えないけど?だいたい、なんで塔矢相手に…?」
ヒカルにとっては、アキラはライバルでしかないと言う事で、どーして?という反応

ボソッと緒方は「天然」と、ヒカルに聞こえないように呟き、携帯灰皿で煙草を揉み消した。


なんとか、緒方の機嫌も平常になり、二人でメシを食う。
本日はリーズナブルで美味い鰻屋(高級な所はヒカルが緊張してしまうので)だった。

車でマンションに向ってる間の会話も盛りあがって、不意に、鰻の話が出た。
「スタミナ付くだろ?」
「鰻でスタミナ付けるなんて、疲れたオッサンみてぇだよな、」
「…そうか…疲れたオッサンか…そして、年寄りだってな。しかも、オレと何かあったら人として終わってるんだよな…」
更に、緒方の機嫌が降下する。ヒカルは『しまった』と思った
「な、何言ってんだよ!オレ、先生の事愛してるって!もー、わかってるくせにっ…ねー」
しかし、ヒカルがどんなに言い繕うとしても…すでに後の祭りだった。

ヒカルちゃ〜ん…君の言いたい事はよーくわかったよ
緒方の妙な言い回しにイヤな予感をヒカルは感じた。…それもそうだ。緒方がかなり根に持つタイプだから…

「今夜は…みっちり、ご奉仕してもらうからな。」

緒方の睨み付ける目が超怖い。緒方は完全に怒ってた

「ひええええぇっ!!!お、降ろして!オレ帰る!」

「…出来ないな」

「だって、玄関先から盛られても嫌っだしっ」
「ほお…玄関から盛って欲しいのか?……ベットに引きずり込んでからにしようと、思ってたのになぁ」

ヒカルは、更に墓穴を掘った事に気が付いたが、とっくに、終わってた(笑)
結局、緒方精次にと言う人物ついて…、進藤ヒカルがヨミ切れないのは、恋人としての彼なのかもしれない


FIN
 後書き:鰻食うあたりでやる気マンマンだろ…気づけよヒカル(笑)そのシーンは…そのなんだ…書かなくても…話成立したし…逃げてるーっ(爆)
ファイル整理してる時に発掘した話を、現代設定に修正してみました。あ、北斗杯は02年設定なんですね…今年が二十だったのか…